2016年4月 - 2020年3月
東南アジア大陸部宗教研究の新パラダイムの構築
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
本年度は、東南アジア大陸部における広義の仏教徒社会における僧俗関係に関する考察を集中的に行った。そこでの討論からは大きく二つの発展可能性が提示された。
ひとつは、出家者への関心と在家者への関心に二分されてきた東南アジア仏教論に代え、僧俗の別に過度にとらわれることなく仏教というシステムをトータルにとらえ直す試みである。この試みにあたっては、出家と在家をまたいで伝承される経典朗誦の伝統や、やはり出家と在家をまたいで行われるアピダルマ学習会といった現象への着目も出発点の問いとして友好であることが明らかになった。
もうひとつは、それとは逆に、東南アジアの多様な宗教的現実を一個のシステムとして記述するために、仏教そのものを相対化するという方向である。本年度の討論からは、華僑系住民が主に拝む神々や廟、あるいはバラモン教の伝統に属すべき諸実践が上座仏教の在家部門に包摂されているという視点(タイ国)、中国系とタイ系の神々の相互乗り入れを記述する上で漢化やシンクレティズムといった概念を再検討する必要性(中国雲南西南部)、同一の神が華僑とクメール人とベトナム人から異なった名称で呼ばれながらひとつの多民族的な儀礼空間を構成している点(メコンデルタ)、制度仏教のジャーゴンぬきにいかに人々のレベルで神聖なるものが神聖なるものとして立ち現れているかを考察することの重要性(ミャンマー、カンボジア)などが明らかになった。
ひとつは、出家者への関心と在家者への関心に二分されてきた東南アジア仏教論に代え、僧俗の別に過度にとらわれることなく仏教というシステムをトータルにとらえ直す試みである。この試みにあたっては、出家と在家をまたいで伝承される経典朗誦の伝統や、やはり出家と在家をまたいで行われるアピダルマ学習会といった現象への着目も出発点の問いとして友好であることが明らかになった。
もうひとつは、それとは逆に、東南アジアの多様な宗教的現実を一個のシステムとして記述するために、仏教そのものを相対化するという方向である。本年度の討論からは、華僑系住民が主に拝む神々や廟、あるいはバラモン教の伝統に属すべき諸実践が上座仏教の在家部門に包摂されているという視点(タイ国)、中国系とタイ系の神々の相互乗り入れを記述する上で漢化やシンクレティズムといった概念を再検討する必要性(中国雲南西南部)、同一の神が華僑とクメール人とベトナム人から異なった名称で呼ばれながらひとつの多民族的な儀礼空間を構成している点(メコンデルタ)、制度仏教のジャーゴンぬきにいかに人々のレベルで神聖なるものが神聖なるものとして立ち現れているかを考察することの重要性(ミャンマー、カンボジア)などが明らかになった。
- ID情報
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- 課題番号 : 16H01895
- 体系的課題番号 : JP16H01895
この研究課題の成果一覧
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論文
1-
パーリ学仏教文化学 33 39-58 2019年12月
書籍等出版物
1-
University of Hawai‘i Press 2022年1月
講演・口頭発表等
5-
龍谷大学世界仏教文化研究センター研究セミナー 2021年10月4日
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東南アジア学会関西地区例会 2020年1月25日
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SEASIA Biennial Conference 2019 2019年12月6日
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パーリ学仏教文化学会 第33回学術大会 2019年5月25日