共同研究・競争的資金等の研究課題

2004年 - 2005年

付加体中の劈開の発達過程と地質構造形成に与える影響についての研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
04J05752
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円

日本列島などのプレート収束帯で特徴的に形成される付加体には,厚さ数km以上に及ぶ劈開の発達したメランジュの存在が知られている.本研究では,近畿〜中部地方の美濃帯ジュラ紀付加体に分布するメランジュに着目し,劈開の産状や変形構造について露頭および顕微鏡下で詳細な記載を行い,メランジュの形成過程を考察した.その結果,劈開の発達は主に,フィロ珪酸塩鉱物の形態定向配列によって規定されていることを明らかにした.メランジュではフィロ珪酸塩鉱物が形態定向配列することによって,含水下で流動的な変形を受けやすくなり,付加体形成に伴う変形がこの部分に集中することを,実験的研究と比較しながら示した.また,劈開の発達度や変形構造の違いから,美濃帯のメランジュの一部は,白亜紀の東アジアにおける横ずれ運動などの,付加体形成後の後生的な構造運動に伴う変形を重複して受けることにより,劈開の発達が密になっていることを明らかにした.
さらに,近畿〜中部地方の美濃帯ジュラ紀付加体において,メランジュに発達する変形構造から,変形を起こした運動方向を調べた結果,右横ずれの運動方向が卓越することが明らかとなった.この右横ずれの運動方向が生じた原因として,ジュラ紀のある時期の東アジアでは,海洋プレートが海溝に対して右斜めに沈み込んでいたために,運動方向が海溝に平行な方向と垂直な方向とに分配されたことを挙げ,メランジュが保存している運動方向は,海溝に平行な右横ずれ運動の方向を示しているという可能性を示した.プレート収束帯で運動方向の分配が起こる場合,大陸側ではしばしば横ずれ断層帯が形成されるが,本研究では,美濃帯の北側に位置する飛騨外縁帯の一部に,複数の横ずれ断層帯が形成されていることを見出し,それらがプレート収束帯での運動方向の分配によって形成された横ずれ断層帯に相当する可能性を指摘した.

ID情報
  • 課題番号 : 04J05752