共同研究・競争的資金等の研究課題

2000年 - 2000年

古人骨の化学分析から見た水田稲作農耕による食生活・生業形態の変化(4)

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特定領域研究(A)  特定領域研究(A)

課題番号
12012225
体系的課題番号
JP12012225
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
1,500,000円
(直接経費)
1,500,000円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

縄文時代および弥生時代の遺跡から出土する骨試料より残存するタンパク質(コラーゲン)を抽出してその炭素・窒素同位体比を測定した。その結果、縄文時代の貝塚遺跡から出土した人骨群はC_3植物と海産物を結ぶ直線状に分布する傾向が見られた。このことから、貝塚遺跡に居住した縄文時代人はC_3植物と海産物のふたつを主なタンパク質源としており、その遺跡立地や個体の履歴によってその割合が変化するものと考えられる。一方、今回分析した弥生時代集団でも縄文時代と同様に大きな地理的変異が認められた。しかし、集団内での個体差を検討すると、千葉県安房神社遺跡と神奈川県大浦山遺跡で炭素同位体比と窒素同位体比の間に有意な正の相関関係が見出さた。その回帰直線は海生魚類とC_3植物の間を結んでいるが、弥生時代にはC_3植物の窒素同位体比が上昇している傾向が認められる。これは水田稲作農耕によって土壌が嫌気的な環境となったため、窒素同位体比が上昇していたことを示唆する。
また、海洋表層の放射性炭素年代における深層水の影響、すなわち「海洋リザーバー効果」を縄文時代の北海道北黄金貝塚から出土した動物骨で検討したところ、オットセイの骨はシカの骨よりも見かけの年代が約860年古くなることが明らかになった。この相違は世界的に見ても大きなもので、北海道を含む北太平洋西部が湧昇流の影響を強くうけていることを示している。さらに、同遺跡から出土した人骨試料で年代測定を実施したところ、シカよりも約680年古い値を示した。このことから北黄金遺跡の縄文人が摂取したタンパク質の約8割が海洋に由来すると考えられる。海洋リザーバー年代は、上述の安定同位体比とは独立した指標であり、炭素・窒素安定同位体比よりも高精度に定量的な復元が可能なことが明らかになった。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/12012225.ja.html
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-12012225
ID情報
  • 課題番号 : 12012225
  • 体系的課題番号 : JP12012225