現在,無線ネットワークに接続可能な携帯端末として携帯電話やPDAなどの機器が普及し,利用者が必要な情報を閲覧するために用いられている.ところが,携帯端末はネットワーク通信速度が遅いことが多く,利用者が必要な情報を得るために必要な時間は長いことが多い.従来,Webブラウザの実装においてこれらの問題を解決するためにWebキャッシュが用いられてきた.ところが携帯端末では,情報を蓄積しておくべき記憶領域が少ないために,従来のWebキャッシュでは十分な性能が得られない場合がある.これは,従来のWebキャッシュが利用者が情報を利用した時間のみに注目しているために,キャッシュ容量が最適に用いられていないためである.そこで本稿では,携帯端末の利用者が必要な情報をあらかじめ携帯端末に保持しておくための方法として,利用者が情報を利用した時間のみではなく情報の大きさを考慮したキャッシュについての提案を行う.また,キャッシュの性能を測定するための手法としてヒット率が多く用いられてきたが,本稿ではヒット率が十分に携帯端末におけるキャッシュの性能を表しているわけではないことを示し,ヒット率に代わるキャッシュの性能の評価尺度として一つの情報ヘアクセスするための平均アクセス時間を提案する.