目的:虐待被害経験に加え何らかの障害のある里子の自立に向けて、里親がどのような養育上の困難さを抱えているか明らかにする。方法:全国の里親およびファミリーホームを対象に、郵送法で自記式質問紙調査を実施した。調査内容は、被虐待経験に加えて何らかの障害や疾患のある里子の養育経験の有無について調査し、その障害・疾患名およびそういった里子の自立支援における問題や困難さについて自由記述にて収集して質的分析を行った。結果:1186件中358件から回答が得られた(回収率30.4%)。そのうち、被虐待経験に加えて何らかの障害や疾患のある里子の養育経験があるのは123件であった(有効回答率34.4%)。障害・疾患には、複数の疾患が記述されており、のべ186の記述に分けられた。精神疾患が155、身体疾患が25であり、F70-F79知的障害<精神遅滞>35、F80-F89心理的発達の障害59、F90-F98小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害31が多かった。自立支援における問題についての記述から、【社会性や対人スキルの未熟さに関連する課題】【心理面の不安定さや自尊感情の低さに関連する課題】【子どもの障害に対する里親支援不足に関連する課題】【移行支援の資源不足に関連する課題】【障害に対する本人と周囲の理解に関連する課題】という5つのカテゴリーとそれらに含まれる18のサブカテゴリーが抽出された。(著者抄録)