2020年4月 - 2023年3月
核酸とペプチドツールを用いたアルツハイマー病関連複合体の形成原理の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
アルツハイマー病患者の脳にはアミロイドβペプチド(Aβ)からなる繊維が蓄積するが、近年、毒性があるのはAβ繊維ではなく、溶解性Aβであると考えられている。また、溶解性Aβは、神経細胞表面に存在するプリオン(PrPC)に結合することで、記憶・学習障害を誘導するシグナルを細胞内に伝達することが示されている。我々は、溶解性Aβに結合し線維化を阻害するPrPC由来ペプチドを見出すとともに、PrPCに強く結合する抗PrPC RNAアプタマーを見出している。本研究ではこれらを使って、溶解性AβとPrPCとの複合体およびAβ繊維の形成原理を解明するとともに、治療への分子基盤を確立することを目指す。近年、マウス海馬薄切片におけるシナプス可塑性(脳の恒常性の維持に関連)は、神経細胞表面にあるPrPCと投与した溶解性Aβとの結合により減弱するということが、海外のグループの電気生理学実験により示されていた。昨年度は我々もこの手法を立ち上げ、種々の条件検討によりプロトコルを整備した。今年度は、実際に溶解性Aβを投与することによりシナプス可塑性が減弱されることを再現できた。さらに、溶解性Aβの投与に合わせて抗PrPC RNAアプタマーをさまざまなタイミングで投与することにより、減弱されたシナプス可塑性が回復することを示すことができた。今のところ一つの指標を用いた評価であるため、他の指標も合わせた評価ができるように検討を進めている。その他、本研究で培った研究手法とノウハウを活かし、神経変性疾患の責任タンパク質の凝集や、運動失調症に関わる核酸のin-cell NMRの研究(雑誌論文、学会発表)、また、ヒト免疫不全ウイルスに対する創薬に関する研究も行った(学会発表)。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K06524
- 体系的課題番号 : JP20K06524
この研究課題の成果一覧
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論文
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Biochemistry 63 632-643 2024年3月5日 査読有り責任著者
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Biophysical Journal 123(3) 294-306 2024年2月 査読有り責任著者
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Biochemical and Biophysical Research Communications 683 149112 2023年10月 査読有り
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International Journal of Biological Macromolecules 253 127188 2023年9月30日 査読有り責任著者
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International Journal of Molecular Sciences 24(10) 9069-9069 2023年5月22日 査読有り
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Chemical Communications 59(1) 102-105 2022年11月29日 査読有り責任著者
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Nature Communications 13(1) 7143 2022年11月29日 査読有り責任著者
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Biomolecular NMR Assignments 16(2) 357-361 2022年8月31日 査読有り責任著者
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Chemical Communications 57 6364-6367 2021年6月17日 査読有り