2018年6月
聴神経腫瘍術後に脳幹・小脳出血を合併し摂食嚥下障害を認めた1症例
新潟歯学会雑誌
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- 巻
- 48
- 号
- 1
- 開始ページ
- 37
- 終了ページ
- 41
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 新潟歯学会
聴神経腫瘍術後に嚥下障害を認めた一例を報告する。症例は56歳女性。2017年2月に小脳・脳幹を圧迫する聴神経鞘腫に対する摘出術施行、術後左小脳出血及び延髄から橋にかけて低吸収域を認めたため、脳内血腫除去および減圧開頭術が施行された。術後11日目に嚥下機能評価目的に当科初診となった。小脳前庭症状としての姿勢保持困難と失調性構音障害、球麻痺症状としての顔面神経麻痺、舌運動減弱、開鼻声を伴う右カーテン徴候を認めた。反復唾液嚥下テストは2回、改訂水飲みテストおよびとろみ付液体3ccでのテストでは3a点(嚥下後湿性音あり)であった。嚥下内視鏡検査時、安静時より咽頭内分泌物貯留、左側披裂・声帯は傍正中位固定で声門閉鎖不良、ホワイトアウトは減弱しており、とろみ付液体摂取時の食道流入不良、鼻咽腔逆流を認めた。さらに、残留物は不顕性誤嚥をしていた。重度摂食嚥下障害の診断にて、口腔ケア・間接訓練から介入を開始した。耐久性が改善した術後19日目以降は間接訓練の負荷を増やし、少量のとろみ付液体を用いた直接訓練も開始した。術後35日目に実施した嚥下造影検査では、依然として嚥下後の咽頭残留量が多く食事開始にはいたらなかった。転院を前に術後55日目に実施した最終評価では、幻暈などの前庭症状は改善していたものの球麻痺症状に大きな変化は認められなかった。最終的に食事開始までは至らなかったものの、訓練の効果による咽頭残留の軽減と姿勢調整を行うことで安全な経口摂取方法の提案ができた。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0385-0153
- 医中誌Web ID : 2018316377