共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2025年3月

近現代のイレズミと自己同一性:身体と絵画の連環をめぐる芸術学的分析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K12853
体系的課題番号
JP20K12853
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,860,000円
(直接経費)
2,200,000円
(間接経費)
660,000円

20年度に引き続きは、新型コロナ状況下において遠方へのフィールドワークが制限されたため、本来の研究計画に基づく調査研究が実施できなかった。ただし、以下の二つの研究実績をあげた。
第一に、当初は予定していなかったが20年度に実施を決めた近隣で調査可能な研究が順調に進展し、成果を学会発表で発表した。この研究が達成された際には、①西洋社会と比較して、日本社会に顕著なイレズミ嫌悪が、先行研究が述べる「ヤクザ映画=イレズミ=悪」という単純化された図式に由来するものではないことの実証、②1980年代末から2000年前後までの「イレズミを入れた身体が語るもの」の社会的位置付けの変容という、二つが明らかになる。
この研究は、東映太秦映画村における「遠山の金さん」ものの資料調査や当時の制作スタッフへのヒアリング調査に基づく。本シリーズは、実在した江戸町奉行・遠山金四郎景元を題材に江戸末期から明治初期以降に創作された歌舞伎・講談を元に、1950年から62年まで、主演に当時の代表的俳優・片岡千恵蔵を据えて毎年製作・公開されていた映画に遡る。50年代末以降にテレビドラマに進出し、連続シリーズは1970年から2007年と半世紀もの間「お茶の間」で放映されてきた。本数は計800本にわたる。
この事実は、特定の期間に映画館でのみ観る「ヤクザ映画」と比較し、「イレズミを入れた金さんの身体=義侠的な身体」が日本社会にとって身近な存在であることを示唆し、その演出・表現を分析し、長きにわたり支持を得てきた理由を考察した。
第二に、本研究が当初に計画していた「身体の絵画化・絵画の身体化」「イレズミ制作を介した自己同一化」に関しては、その視点や論点を文章化し『現代思想』に掲載することで、研究の枠組みに対する意見や反響が得られた。結果として、本研究の期間が終了するまでに書籍の出版など具体的な成果還元の計画がたった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K12853
ID情報
  • 課題番号 : 20K12853
  • 体系的課題番号 : JP20K12853

この研究課題の成果一覧

講演・口頭発表等

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