講演・口頭発表等

2022年5月6日

第二帝政期フランスの少女雑誌における「人形(poupée)」──ブルジョワ女性の規範をめぐる両義性

日仏女性研究学会 2022年度 第1回 表象の会
  • 谷口 奈々恵

記述言語
会議種別
口頭発表(一般)

本発表の目的は、1863年にフランスで創刊された「人形(poupée)」をテーマとする少女雑誌『ラ・プペ(La Poupée)』(1863)、『ガゼット・ドゥ・ラ・プペ(Gazette de la poupée)』 (1863-1867)、『ラ・プペ・モデル(La Poupée modèle)』(1863-1924)を対象に、第二帝政期の少女教育において人形が果たしていた役割を、ブルジョワ女性に対するジェンダー規範の観点から考察することにある。
19世紀半ばのフランスにおいて、女性型の人形は女児の代表的な玩具であり、人形の制作は産業として洗練を極め、児童文学においては人形をテーマとする作品が流行していた。こうした社会・文化的状況を背景に刊行された上記の雑誌が、モノとしての人形といかに結びつき、誌面において人形というモティーフをどのように活用していたかを検討することによって、母性やケア役割を教育する道具としての役割を期待されていた人形が、他方で少女たちに規範からの逸脱を促し得るという、両義性を孕む存在であったことを明らかにする。