共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

福島原発事故被災野生ニホンザルを用いた放射線病理学的解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K12173
体系的課題番号
JP20K12173
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

チョルノービリ原発事故後、ヨウ素131の内部被ばくによる小児甲状腺がんの増加が観察された。福島第一原発事故後の福島県民健康調査で、小児甲状腺病変の罹患率が従来考えられていたよりもはるかに大きいことが明らかとなっている。ヨウ素131の半減期は約8日と短く、事故直後でないと正確な放射能濃度の測定が難しく、福島における甲状腺病変例とヨウ素131被ばくとの関係は不明である。そこで我々は、野生ニホンザルの結果をヒトへ還元できないか模索している。2013年から2022年3月までに捕獲された野生ニホンザルのうち、449頭を解剖し、甲状腺の上皮性病変巣を4頭に見出した。2頭に乳頭状の増生像、1頭に血管を介した管腔様構造、1頭に血管と上皮の密な配列を認めた。サルでの既報告例はないが、掘院研究で観察された甲状腺病変の頻度は高いと考えられる。しかし、いずれの病変も径が0.5mm以下と小さく、ヒトの甲状腺乳頭癌でみられるような核所見は明らかでなかった。
ヨウ素131のサロゲートマーカーである超長半減期ヨウ素129の測定を終えた個体48頭について捕獲場所を、北から南相馬市の鹿島区、原町区、小高区と浪江町の4か所に分け、事故後の経過日数を横軸に、甲状腺のヨウ素129濃度と安定ヨウ素127濃度との比を縦軸に作図しした。ヨウ素129/127比は経時的に減少傾向にあり、対数にしたところ、地域ごとに近似直線を引くことでき、実効半減期は660日から1420日であった。2頭でしか確認できなかったが、ヨウ素131の土壌線量マップを重ねてみたところ、関係性は明らかではなかった。
これらの結果から野生サル個体の初期被ばく線量の査定が可能となった。今後、放射性セシウムを含めて、内部被ばくと甲状腺病変との関連を明らかにする。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K12173
ID情報
  • 課題番号 : 20K12173
  • 体系的課題番号 : JP20K12173