2020年12月
事故事例からの学習における省察過程の検討:若年作業監理者が効果的に学ぶための認知方略への着目
人材育成研究
- ,
- ,
- 巻
- 16
- 号
- 1
- 開始ページ
- 3
- 終了ページ
- 13
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- 人材育成学会
本研究では請負構造の作業現場で作業監理を務める若年就業者を対象とし,産業現場の事故事例という失敗の間接経験を振り返る際に用いる認知方略が,事故事例からの学習に及ぼす影響の解明を目的とした。既存研究に基づき,失敗の省察過程において次の二点を仮定した。第一に,省察過程では3つの認知方略,すなわち経験間の共通性の認識,差異性の認識,多角的視点が順に用いられる。第二に,経験間の共通性の認識という認知方略の使用傾向が高い場合には,認知方略間の関連性や,認知方略と安全監理行動,すなわち作業現場の安全に配慮した監理行動の実践との関連が強い。請負形態で設備保守を担う企業における30歳以下の技術系社員144名に質問紙調査を実施し,仮説モデルを共分散構造分析で検証した。その結果,第一の仮説は,現場の状況に注意を払うモニタリング行動においてのみ支持された。第二の仮説は,一部の認知方略間の関連性でしか支持されなかったものの,共通性の認識を十分に行う場合には差異性の認識が安全監理行動に寄与し,そうでない場合には安全監理行動への寄与が認められないという結果が認められた。これは,共通性の認識が失敗の間接経験からの学習において重要な役割を担うことを示唆している。得られた結果を踏まえ,本研究の理論的貢献と実践的貢献について考察した。