2006年4月 - 2009年3月
中央ユーラシア乾燥域における近年の水文環境の変容と人間活動影響評価
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
- 担当区分
- 研究代表者
- 資金種別
- 競争的資金
中央ユーラシア乾燥域のうち、中国側の新疆ウイグル自治区のタリム河では、1950年代以降、新規灌漑農地開発が進行した。この際新たに開発された農地は、従来は塩分濃度が高いなどの理由により放棄されていた土地などであったため、除塩のために灌漑水が通常よりも多く必要とされるなど水の利用が助長され、タリム川を形成する主要な三つの河川、ヤルカンド川(本流)、アクス川、ホータン川のいずれもが、その流出量が1950年代から1990年代にかけて約60%程度まで減少し、下流部での深刻な水不足、灌漑農地の放棄や河畔林の衰退などを招いたことが明らかになった。同様な農業開発の水文環境への影響は、天山山脈北側のジュンガル地域、さらに西方のカザフスタンをはじめとする中央アジア地域でも起こったが、カザフスタンなど旧ソ連邦諸国は、ソ連邦の崩壊という政治・経済的な打撃によって、逆に環境への負荷が一時的に減少する結果となった。