2020年12月8日
ナショナルな物語に回収しきれないローカルな伝統──インドネシア・ジャカルタ郊外の集落武術から
伝統武術のグローバル化連続講演会
ダウンロード
ポスター
回数 : 91
- 開催年月日
- 2020年12月8日 - 2020年12月8日
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
- 主催者
- 静岡県立大学国際関係学部
- 開催地
- オンライン開催
インドネシアの首都ジャカルタ周辺では、近隣地域の日常生活に根差した「集落武術」ともいえる実践が広く営まれてきました。これは、オランダ植民地期、ジャカルタがまだバタヴィアと呼ばれていた時代からの先住者集団であるブタウィ民族の文化実践として知られています。郊外には、植民地期から続く集落(kampung)を単位とした社会組織や帰属意識を色濃く残す場所もまだあり、そうした地域では、かつてブタウィ語で「拳遊び」(maen pukul)と総称された様々に異なる流派の武術が、集落独自の伝統として、それぞれの集落の先住者によって今に至るまで営まれています。
本講演では、カンプン・ウタンと呼ばれる集落の伝統武術実践を取り上げ、国家が振興した民族や文化の観念には回収できないローカルな実践の意味を考察したいと思います。当地の武術実践は、二人一組で手を取り合って技を探し出すことをその核心とし、常態的な改変が伝統の存続にとって不可欠であるという明確な意識のもと行われています。この考察から、日々のなにげない実践の積み重ねが、地方文化や国民的スポーツの振興を通して国家レベルで推進される「民族」「文化」の概念化の統制のおよばない領域を生活の中に確保する基盤となる可能性を論じます。
本講演では、カンプン・ウタンと呼ばれる集落の伝統武術実践を取り上げ、国家が振興した民族や文化の観念には回収できないローカルな実践の意味を考察したいと思います。当地の武術実践は、二人一組で手を取り合って技を探し出すことをその核心とし、常態的な改変が伝統の存続にとって不可欠であるという明確な意識のもと行われています。この考察から、日々のなにげない実践の積み重ねが、地方文化や国民的スポーツの振興を通して国家レベルで推進される「民族」「文化」の概念化の統制のおよばない領域を生活の中に確保する基盤となる可能性を論じます。