共同研究・競争的資金等の研究課題

2002年4月 - 2006年3月

経済発展過程における社会変容:親族制度と社会慣習の国際比較

外部資金(日本学術振興会)  科学研究費助成事業  基盤研究(B)
  • 中西 徹

課題番号
14402013
体系的課題番号
JP14402013
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
8,000,000円
(直接経費)
8,000,000円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究では,発展途上国の経済発展過程において,親族制度や社会慣習が,当該地域の社会変容にどのような影響を与えてきたかについて,多面的な国際比較を行った。その成果を一言で言えば,現在,国際開発において興隆しているコミュニティ開発に対する代替的な議論の提示である。すなわち,「新制度学派」に顕著な明確な目的達成という利害に基づいて組織されたコミュニティ像とは異なり,フィリピン,コロンビア,韓国のそれは,親族関係をはじめとする社会ネットワークがはじめに条件としてあり,その成長が人々の地域への愛着をもたらし,共同利害を形成するというコミュニティの論理である。この場合には,誘因機構を用いた直接的な組織化は,従来から存在するコミュニティ資源の活用を効率化するどころか,その存立基盤である社会ネットワークの機能を阻害する可能性さえある。本研究は,従来の開発戦略に欠けていた初期条件として存在するコミュニティ資源の発見とその意義をあきらかにした。具体的には,フィリピンでは,親族姻族関係と儀礼親族関係の発展によって,都市不法占拠区における住民が土地所有権という利害を共有する過程をあきらかにした。コロンビアにおいては,都市在住の農村出身貧困者が,地縁血縁関係を活用して政治参加を実現している現状が報告されている。また,韓国においても,社会発展過程において,経済動機よりも文化や歴史的要因が家族の行動様式に大きな影響を与えることがあきらかになった。さらに,こうした有機的な社会関係にもとづく社会ネットワークを活用する事例として,市場至上主義を克服する地域資源の循環のメカニズムを政策的含意として提示することができた。以上のように,本研究はコミュニティ論への新しい視座を提示したが,それは限られた地域のみを対象としている。今後とも,対象を広げ,社会ネットワーク分析を活用しつつ,理解の深化を目指したい。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-14402013
ID情報
  • 課題番号 : 14402013
  • 体系的課題番号 : JP14402013