2006年に筑波大学に提出した博士論文「日本近代文学研究における文学館の役割：「全国文学館協議会」加盟文学館の発行物を中心に」の資料編をもとにして，再編集したものである。2006年の時点では，全国69館の文学館で6,283点の出版物を確認し，それらを書誌としてまとめていたが，その後の追調査の成果を加え，2013年現在で9,387点の出版物を確認することができた。文学館出版物を，その内容や形態の面から大きく６つの性質に整理し，さらに17種類の形態に分類している。具体的には，［A］展示の記録（①図録），［B］所蔵資料の記録（②目録），［C］所蔵資料／対象作家の研究（③紀要，④研究誌，⑤研究書，⑥記録集，⑦事典），［D］対象作家の作品（⑧作品，⑨復刻，⑩複製，⑪翻刻，⑫全集），［E］利用者の作品（⑬文芸雑誌，⑭創作集，⑮受賞作品集），［F］文学館活動の記録（⑯館報，⑰記念誌），という分類になっている。本書により，団体著作物としての文学館出版物の整理方法が示されるとともに，2013年までの全体像が把握可能になった。本書の記述にあたっては，それぞれの出版物の目次情報まで詳しく記述するなどの工夫をこらしていることもあり，図書館で活用するレファレンスツールとしても大きく注目されている。本書の出版により，2014年に「第8回野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞」を受賞した。