共同研究・競争的資金等の研究課題

2003年 - 2004年

有機溶剤曝露が幼若動物の脳内GABA神経系の発達に及ぼす影響についての実験的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
15590512
配分額
(総額)
2,800,000円
(直接経費)
2,800,000円

1.幼若動物用の曝露実験装置の作成と吸入曝露実験
幼若な動物に連続してm-キシレンを曝露するため,曝露実験装置(実験系)を試作した。すなわち,チャンバー内を動物の発育に応じた環境に保つために,低温恒温装置(恒温域が広いもの)内に曝露チャンバーを数個格納出来るように設計した。この装置を運用してみた結果,動物の生活環境をなるべく保存した状態で曝露実験を行うことが適当と考えられた。そこで,チャンバー内に動物を入れるのではなく,ケージごと特殊な素材(ガス透過性が極めて小さいもの)で包み,動物の飼育環境を損なわずに比較的長期間小規模の曝露実験が可能となる装置を開発した。本件は,第78回日本産業衛生学会で発表した。
この装置を用いて,3週令のラットに対してm-キシレンを250ppm,6時間,連続14日間曝露する実験を行った。
2.行動科学的観察
ロータロッド装置によって,神経系の発達程度を行動科学的に観察した。その結果,曝露群の方がむしろ協調運動がよいという予想外の結果が見出された。この点は,さらに検討を要する。
3.形態学的変化の観察
曝露による神経系の変化の観察は,脳組織の切片を作成し,これを組織学的方法で観察した。Luxol Fast BlueとCresyl Violetの二重染色では,脱髄性変化をはじめとして,特に暴露による影響は指摘できなかった。免疫組織化学的検索では,GABA作動性神経のマーカーであるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)とGABA_A受容体のα_6サブユニットの検索を行ったが,指摘可能な変化はなかった。
さらに[^3H]Ro15-4513によるオートラジオグラフィーを実施し,得られた画像を解析したが有意な変化は検出されなかった。
行動科学的観察の結果などを総合すると,将来的にはGABA神経系だけでなくカテコールアミン神経系やセロトニン神経系の関与もあわせて検討する必要性が示唆された。

ID情報
  • 課題番号 : 15590512