基本情報

所属
同志社大学 教授
京都府立医科大学 客員教授
学位
博士(医学)(京都府立医科大学)

研究者番号
10581499
J-GLOBAL ID
201201031378924380
researchmap会員ID
B000219920

外部リンク

【概要】
角膜移植の最も多い原因である角膜内皮障害の新しい治療法の開発を行っています。現在、角膜内皮障害に対する治療法はドナーより提供された角膜の移植のみですが、我々の研究チームでは再生医療または点眼薬などの薬物による全く新しい治療法を開発しています。再生医療である培養角膜内皮細胞移植は2013年より世界初となる臨床研究の開始を実現しました。点眼薬についても研究成果をもとに米国、フランス、インドにおいてFECD患者を対象とした第Ⅱ相試験(PHANTOM study)が進められています。また、人工知能(AI)を用いた様々な医療の問題の解決にも取り組んでいます。私の研究の最終ゴールは、研究により生み出された新しい治療法や研究成果を社会に届けることでより良い医療を得られる社会の実現に貢献することです。

【再生医療の開発】
我々の研究チームは、これまで通常の培養法では培養が困難であった角膜内皮細胞の、大量かつ安定な培養法を確立しました。また、Rhoキナーゼ阻害剤が角膜内皮細胞の細胞接着を促進することを発見し、Rhoキナーゼ阻害剤とともに細胞を目の中に注入するというアイデアにより、角膜内皮の再生が可能であることを動物モデルにおいて明らかにしました。これらの研究成果は、同志社大学と京都府立医科大学の共同研究として、京都府立医科大学附属病院において2013年に培養角膜内皮細胞を用いたFirst-in-human試験の成功につながりました。2018年には、同志社大学発のスタートアップであるアクチュアライズ株式会社を共同起業し、ready-to-useの凍結角膜内皮細胞製剤の開発を進めています。今後、治験、承認を経て製品化されれば、角膜移植が必要であった患者さんが、再生医療により注射だけで治療できるようになると考えています。

【角膜移植に代わる薬物治療の開発】
私達は、角膜移植などの手術によらない、薬物による角膜内皮障害治療法が、次の10年、20年後の標準的な治療法になると考えています。例えば2009年に、Rhoキナーゼ阻害剤が角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することを発見しました。実際に、角膜内皮障害患者を対象にRhoキナーゼ阻害剤点眼の臨床研究を実施し、特に早期の角膜内皮障害患者において有用であることを明らかにしました。これらの成果をもとに、現在米国での治験によりフックス角膜内皮シストロフィという角膜移植の原因第1位の疾患に対してROCK阻害剤点眼薬の有効性が証明されつつあります。
また、これまでにフックス角膜内皮ジストロフィの角膜内皮、血液ゲノムのライブラリーをドイツの研究チームとともに作成しました。さらに、フックス角膜内皮ジストロフィの疾患モデル細胞の樹立に成功しました。これらを用いた解析により、TGF-βの活性化が原因となり、細胞外マトリックス関連タンパク質の産生が過剰になることで小胞体に変性タンパク質が凝集することを明らかにしました。さらにはその変性タンパク質の凝集が原因となり、小胞体ストレス応答による細胞死が生じることが病気の本態であるという説を提唱するにいたりました。この病態にもとづき複数の薬剤が、フックス角膜内皮ジストロフィの進行予防薬として有用である可能性が高いことを発見しました。特に、mTOR阻害剤については、米国、フランス、インドにおいてFECD患者を対象とした第Ⅱ相試験(PHANTOM study)が進行しています。


学歴

  2

受賞

  10

論文

  101

MISC

  102

書籍等出版物

  3

講演・口頭発表等

  414

共同研究・競争的資金等の研究課題

  11