2020年2月
救急医療の推進とキャリア形成 共働き医師が活躍できる救急医療を目指して 救命救急センター長としての工夫と課題
医療
- 巻
- 74
- 号
- 2
- 開始ページ
- 69
- 終了ページ
- 72
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)国立医療学会
社会全体の労働形態の変化にともない、夫婦ともに常勤の就労を行う「共働き医師」が急速に増加している。私たちの救命救急センターも、既婚者のほとんどが共働きである。共働き医師の増加により、医師の性別を問わず、養育や介護など「社会的弱者」の扶養義務と、医師としての責務との両立が可能である環境の整備が望まれている。重要な事項として「医師個人」ではなくむしろ「世帯全体」を支えるという視点があると思われる。たとえば共働き世帯における特徴として、「扶養のためのrush hour」の存在があり、そのため私たちの救命救急センターでは、time keeperを配置する、カンファレンス等がこの時間帯に重複しないように留意する、などの工夫を行っている。一方、「共働き」「非共働き」といった世帯環境による社会的特性は大きく異なり、このことが問題をさらに複雑にしていると考えられる。たとえば、現状の給与体系は画一な勤務条件を前提としているため、勤務内容・拘束時間などによるバリエーションがつけにくく、金銭的な理由により「共働き」「非共働き」といったグループ間での利害対立をおこしかねない状況に陥っていると思われる。同時に、就学児を有する中核医師の「金銭的な問題による離職のリスク」も重大な問題であり、それゆえに、給与体系・勤務体系にいかに柔軟性を持たせるか、が今後の課題ではないかと考えられる。救急医療は、労働集約性が高く、シフト勤務に適していることなどから、時間的な制約の多い共働き世帯にも十分適応できる分野と思われるが、シフト制の維持のための人員の確保や労働集約性の維持、労務管理などが課題と考えられる。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0021-1699
- 医中誌Web ID : 2020164329