共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年6月 - 2020年3月

不活性結合の二重切断を利用する触媒的カルベン発生法の開拓

日本学術振興会  科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
  • 浅子 壮美

課題番号
17K19122
配分額
(総額)
6,110,000円
(直接経費)
4,700,000円
(間接経費)
1,410,000円

炭素を含む単結合の切断を起点とする物質変換反応は、クロスカップリング反応を筆頭に有機合成における基盤技術のひとつとなっている。なかでも、炭素-水素結合や炭素-炭素結合などの不活性結合の切断を利用するさまざまな物質変換反応が近年注目を集めている。これらの多くの反応において、不活性単結合は金属により一回切断され、炭素-金属単結合をもつ有機金属化合物が生成する。一方、同一炭素から伸びる結合を二回切断するとカルベンが生成するが、結合二重切断化学は、ジアゾ化合物やgem-ジハロ化合物のもつ結合エネルギーの小さい活性結合の切断に依然として依存しており、前者の結合一重切断化学に比べて大きく遅れをとっている。本研究では、不活性結合の二重切断による金属カルベン種の発生を鍵とする全く新しい物質変換反応開発を目指している。本年度は、モリブデン/キノン触媒を用いると、近傍にピリジル基やピリミジル基を有するシクロプロパンから脱エチレンを伴う逆シクロプロパン化反応が進行し、ピリドイソインドールおよびピリミドイソインドール誘導体が得られることを見出した。シクロプロパンは主にC3ユニットとして利用されてきたが、本反応ではシクロプロパンを通常とは異なるC1ユニットとして有機合成に利用することに成功した。実験研究と併行して行ったDFT計算により、本反応は、1)ピリジル配向基によるproximal選択的炭素-炭素単結合切断を経るメタラシクロブタン中間体の生成、2)エチレンの脱離によるメタルカルベン中間体の生成、3)ピリジル基のカルベン炭素への求核攻撃による分子内環化を経て進行していることが示唆された。さらに、ルテニウム/キノン触媒を用いると、近傍にカルボニル基を有するシクロプロパンからも逆シクロプロパン化反応が進行し、イソベンゾフラン誘導体が得られることを見出した。