共同研究・競争的資金等の研究課題

企業価値評価における経営者予測利益とアナリスト予測利益の有用性に関する実証研究


配分額
(総額)
1,200,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究の目的は,企業の経営者が前年度の決算情報とともに公表する,当年度の予想利益について,経営者の株主への意識がその精度に与える影響と,公表された予想利益に対する株式市場の反応を実証的に分析することを通じて,経営者予想利益の存在意義を確認することにあった.経営者の意識を推し量るための代理変数として,定時株主総会の所要時間を利用した.定時株主総会は,企業経営者が株主に対し,経営方針などを直接説明することができる稀有の場であることから,安定株主を獲得しようとする経営者はより丁寧な株主総会運営を心がけるであろうし,そのことは,少なからず所要時間の差となって現れるものと考えたからである.とりわけ,企業間の株式持合いの解消が進行するにつれ,安定的な個人株主の獲得に迫られる企業が増加する中で,株主総会の重要性は益々高まっているものと思われる.実証分析の結果,株主総会が活性化した企業においては,他の企業と比べ,また活性化する以前の年度と比べ,経営者予想利益の精度が向上していることが確認された.しかし,この結果に対し,予想利益と実際利益との差を以って予想利益の精度を測定する場合,実際利益を何らかの方法で予想利益に近づけようとする経営者が存在する可能性が指摘された.これに対し,裁量的会計発生項目額の変化を観察したところ,そのような懸念はまったく不要であり,純粋に予想利益の精度が向上していることを確認した.また,株主総会の活性化と経営者予想利益の精度向上が観察された企業に対し,株式市場が好意的に反応すること,そしてそれらの企業の公表する予想利益の価値関連性が高いことも合わせて確認された