論文

2019年9月

【精神医学における様々な仮説とモデルの今I】うつ病のモノアミン仮説の現在

精神科治療学
  • 廣瀬 智之
  • ,
  • 柳 雅也
  • ,
  • 白川 治

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9
開始ページ
1023
終了ページ
1029
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(株)星和書店

うつ病のモノアミン仮説は、1950年代の抗うつ効果を示す薬物の発見とそれに関連する作用機序解明に始まる。抑うつを引き起こす降圧薬(reserpine)や気分高揚をもたらす抗結核薬(iproniazid)と、抗うつ効果が発見されたimipramineの作用機序解明により、うつ病ではモノアミンが欠乏しているとする仮説が導かれた。薬物の作用機序が解明されるとともに、うつ病の病態でセロトニンとカテコラミンのいずれが重要なのかが課題となった。1980年代に三環系抗うつ薬(TCA)が抗うつ薬の主役となるなか、セロトニン再取り込み阻害を強化する薬物が開発され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の登場に繋がった。SSRIは、TCAの重篤な自律神経系の副作用を回避した抗うつ薬として受け入れられ、後に開発されるSNRIとともに抗うつ薬の第1選択と位置づけられた。現在うつ病診療で用いられているすべての抗うつ薬は、うつ病の病態はモノアミン欠乏にあるとした従来のモノアミン仮説を超えているわけではない。モノアミン仮説は、従来の前シナプスないしはシナプス間隙の病理を重視する考え方から、後シナプス受容体以降の情報伝達系の機能障害に基づく仮説へと変遷し、こうした新しい病態仮説に基づいた創薬も進められてきたが、未だ臨床応用には至っていないのが現状である。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0912-1862
  • 医中誌Web ID : T920050008

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