2022年5月 - 2022年5月
北日本における近自然林業の適用:東京大学北海道演習林での62年間の推移
公益財団法人日本科学協会 海外発表促進助成
気候変動は、昆虫の発生や台風などの撹乱レジームを変化させることにより、森林に多大な影響を及ぼす可能性がある。気候変動への適応や緩和のために有効な手法として、近自然林業が世界的に注目されつつある。近自然林業は、森林生態系が本来的に有するプロセスを重視した管理手法の一つであり、構造的・空間的に不均一な異齢混交林を維持するために択伐と天然更新が通常用いられる。単一樹種の同齢林に比べて生態系の撹乱に対する回復力が高いと考えられている。森林生態系が地域固有のものであることから、近自然林業は各々の国・地域で独自に適用されてきた。北日本における近自然林業の応用例として、林分施業法が1958年から東京大学北海道演習林(東大北演)で採用されている。本報告では、東大北演が60年以上にわたり適用してきた林分施業法の施業経過と森林資源の変化を総括する。林分施業法では、面積2万haの森林をその特徴や管理目的に応じて回帰年ごとにいくつかの林種に区分する。それぞれの林種に対して適切な施業法または複数の施業法の組み合わせが順応的に決められる。主な施業法として単木択伐が実行されており、広い面積から定期的に単木を択伐している。林分施業法では現在、レーザー測量(LiDAR)や無人航空機(UAV)による写真測量など、革新的な地理空間技術を活用して施業管理計画を策定している。
- リンク情報
- ID情報
-
- 課題番号 : F22-108