気液交番環境で形成する鉄さび層の構造解析
腐食防食協会第65回材料と環境討論会
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- 開催年月日
- 2018年10月
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 開催地
- 富山
- 国・地域
- 日本
既報では福島第一原子力発電所の格納容器内部を模擬した気液交番環境で炭素鋼の腐食速度は常時水中の場合より3倍以上速いことを明らかにした。本発表では、気液交番環境中で鋼材表面に形成させた鉄さび層の構造を断面観察および分析により解析し、気液交番環境における鋼の腐食加速機構について報告する。浸漬試験後の試験片断面写真より、鉄さびの厚さは約500um以上で、最外層に光顕では橙色のさび層が、その下部には密なさび層が確認できる。顕微ラマン分光分析より、外側の橙色の層は$\gamma$-FeOOHで、密な層はFe$_{3}$O$_{4}$であることがわかった。すなわち、鉄さび層の最外部では最初に$\gamma$-FeOOHが形成し、その後Fe$_{3}$O$_{4}$へのカソード還元が生じたと考えられる。素地Fe/鉄さび界面では局部的な腐食が生じており、その界面付近にはClの濃縮が確認された。すなわち、さび層下部では塩化物イオンの濃縮により、再不動態化が阻害されて鉄のアノード溶解反応が促進されたと考えられる。以上より、気液交番環境では鉄さび層上部でカソード反応が下部ではアノード反応が促進されることで電気化学反応が相乗的に加速され、腐食速度は全浸漬回転の条件より速くなったと推察する。