<I>Gloeobacter violaceus</I> PCC 7421はチラコイド膜を持たず、細胞膜に光合成電子伝達系が存在することを大きな特徴としている。これまでにいくつかのシアノバクテリアのチラコイド膜形成関連遺伝子が同定されており、<I>Synechocystis</I> sp. PCC 6803の<I>vipp1</I>（vesicle-inducing protein in plastids 1）がチラコイド膜形成に必須であり、<I>vipp1</I>と有意な相同性を示す<I>pspA</I>（phage shock protein A）にはその機能がないことが報告されていた[1]。一方、<I>G. violaceus</I>のゲノム配列から<I>vipp1</I>様の遺伝子として<I>glr0898</I>が発見されたが、一次配列からは機能を推定できなかった。<br>我々は<I>glr0898</I>の機能を調べる為、<I>Synechocystis</I>の野生株に<I>glr0898</I>遺伝子を導入し、内在型の<I>vipp1</I>遺伝子を欠損した変異体の生理学的解析を行った。この変異体は野生株とほぼ同様の生育速度と細胞の吸収スペクトルを示し、クロロフィル含量の低下も見られなかった。以上の結果は<I>glr0898</I>が<I>Synechocystis</I>の<I>vipp1</I>の機能を相補したことを示唆している。<br><br><br>[1] Westphal et al. (2001) <I>Proc. Natl. Acad. Sci. USA</I>, 98, 4243.