目的:就業時のストレスから回復するための余暇の過ごし方はリカバリー経験と呼ばれ、労働者の精神的健康と関連することが報告されている。消防職という特殊なストレス下にある職業においては、精神的健康に効果的なリカバリー経験が他の職業と異なる可能性が考えられるが、消防職を対象とした研究はこれまで行われていない。そこで、消防職におけるリカバリー経験と抑うつとの関連を検討し、事務職と比較を行った。方法:2013年11月に横断研究を行った。地方自治体勤務の男性消防職と男性事務職を対象とした。抑うつの評価は、抑うつ自己評価尺度(CES-D)日本語版を用い16点以上を抑うつ有りとした。リカバリー経験については4つのサブスケール(心理的距離、リラックス、熟達、コントロール)からなるリカバリー経験質問紙日本語版を用い、それぞれのサブスケール得点を算出した。抑うつの有無を従属変数、リカバリー経験の各サブスケール得点を独立変数として、職種別に多重ロジスティック回帰分析を行い、調整オッズ比(AdjORs)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。結果:消防職299名および事務職510名を分析対象とした。消防職では抑うつがないこととリラックス得点が高いことが関連[AdjORs(95%CI)2.05(1.03〜4.06)]し、事務職では抑うつがないことと心理的距離[1.36(1.00〜1.84)]、リラックス[1.90(1.26〜2.86)]、熟達[1.49(1.11〜2.01)]得点が高いことが関連した。結論:消防職においては、リラックスのみが抑うつのないことと関連し、事務職と異なる結果であった。消防職の抑うつ予防にはリラックスに重点を置いた対策が重要かもしれない。(著者抄録)