MISC

2008年

原爆被爆者皮膚組織ではゲノム不安定性が亢進している

日本放射線影響学会大会講演要旨集
  • 成毛 有紀
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  • 中島 正洋
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  • 鈴木 啓司
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  • 近藤 久義
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  • 松山 睦美
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  • 七條 和子
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  • 関根 一郎

2008
0
開始ページ
172
終了ページ
172
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
Journal of Radiation Research 編集委員会

【目的】被爆後63年が経過し原爆被爆者は既にがん好発年齢に到達している。我々は近距離被爆者の多重がん罹患の増加を報告した。放射線後障害としての固形がんリスクは疫学的に現在でも存続しているが、その分子機構は解明されていない。非メラノーマ性皮膚がんのひとつ基底細胞癌(BCC)は紫外線をリスク因子とする固形がんで、被爆者では原爆放射線との関連が知られている。多くの腫瘍ではゲノム不安定性(GIN)を背景とする染色体・遺伝子レベルの変異の蓄積が発生・進展に重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究の目的は、被爆者発がんリスク亢進の背景因子としてのGINの関与をBCC周囲非腫瘍部皮膚組織において検討することにある。【方法】病理診断された直接被爆者BCCは146例であった。粗罹患率は9.4 / 10万人年で、近距離被曝はBCC罹患の有意な危険因子(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.68-0.88)であった。紫外線の影響のない被覆部に発生したものは23例であり、このうち近距離被爆者群(1.5km以内)7例、遠距離群(3.0km以遠)5例を対象とした。対照として非被爆者の被覆部に発生したBCC8例を用いた。GINの程度は53BP1の蛍光免疫染色で評価した。53BP1 はDNA損傷応答(DNA damage response: DDR)分子で、通常は核内に均等に分布し(安定型)、損傷時局所に集積し核内フォーカスとして観察される(DDR型)。【結果】遠距離群と対照群では表皮細胞の平均80%が安定型を示し、DDR型は20%で基底側に限局していた。一方、近距離群では安定型は40%で、35%はDDR型であった。さらに2例では90%が高発現型を示した。【考察】近距離被爆者群では発がんリスク増加の背景因子として、DDRの亢進、即ちGINが存在し、原爆放射線被曝による晩発障害の可能性がある。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006999100
CiNii Resolver ID
http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000391976061