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ライフサイエンス / 医用システム

先進的な暗号化技術を活用したがん検診の精度評価システムを開発 情報漏洩のリスクなしに分散管理された医療データの統合が可能に

報道関係者 各位

先進的な暗号化技術を活用したがん検診の精度評価システムを開発

情報漏洩のリスクなしに分散管理された医療データの統合が可能に

臨床研究所がん予防・情報学部では、大阪大学大学院工学研究科(宮地充子教授)と共同で、 先進的な暗号化技術であるプライバシを保護したデータ統合技術を活用したがん検診の次世代 精度評価システムを開発しています。今回、この取り組みの成果を国際的な学術誌に発表しま したのでお知らせします。

<研究開発の背景>

がん検診を受けることで、がんを早期発見し予後を改善できることから、多くの自治体や企 業でがん検診が提供されています。がん検診が適切な水準で提供されているかを判断するには、 がん検診を受けた方が本当にがんだった/がんではなかった、という答え合わせをして精度を 評価することが必要です。がん検診のデータを、都道府県全域のがん情報が登録される「がん 登録」のデータと照らし合わせることでこれが可能となります。しかし、照合に必要な個人情 報の取り扱いに関する手続きや、環境整備の煩雑さ、情報漏洩リスクなどが障害となり、がん 検診を実施する自治体でもなかなか持続可能な評価システムを構築できずにいるのが現状です。

<医療データ×プライバシを保護したデータ統合技術> プライバシを保護したデータ統合技術は、異なる機関に保管されたデータの中から、プライ

バシ情報を秘匿したまま、一致するデータのみを抽出・統合する技術です。機密情報を秘匿し たままで、異なる機関が保有するデータ同士を統合できることから、ビッグデータや人工知能 (AI)を用いたデータ解析の分野で注目を集めています。この技術をがん検診に活用すること で、がん検診のデータとがん登録のデータを安全性の高い状態で統合することが容易になりま す。それにより、今まで十分に進んでいなかったがん検診の精度評価の取り組みが、多くの自 治体で加速することが期待できます。 臨床研究所がん予防・情報学部では大阪大学の宮地教授らが開発したプライバシを保護したデ ータ統合技術であるPrivacy-Preserving Distributed Data Integration(以下PDDI)をがん検診の精度 管理に応用する共同研究を2020年より開始し、この度、次世代精度評価システムの開発に成功 しました。その成果をまとめた論文が、医療分野におけるDXの国際的な学術誌であるJMIR Medical Informatics誌(電子版)に掲載されました。

<成果の概要と今後の展開>

本研究では、がん検診の受診データとがん登録の罹患データを模した約4万件のダミーデータ を作成し、PDDI技術を利用した突合システムを用いてデータ統合実験を実施しました。結果、 がん検診の精度を評価する上で十分な突合感度(同一人物を正しく当人と判定する割合)が得 られることがシミュレーションからも示されました。また自治体などで用いられる一般的な端 末のスペックでも実用に足る速度で動作可能なことがわかりました。

将来的には、各自治体で行われているがん検診に本システムを実装することで、あらゆる自 治体で安全かつ簡便にその精度を評価できるようになることを目指しています。これにより、 高い水準のがん検診を地域住民に提供できるとともに、不利益の大きい検診項目を整理するな
ど、データに基づいたがん検診の効率的な運用が可能となります。臨床研究所がん予防・情報 学部では、本共同研究を皮切りに、現在活用されず無駄になっている様々な医療データが相互 に結びつき、社会で生かされるデータ駆動型の公衆衛生システムの構築を目指します。

当該論文:

Privacy-Preserving Distributed Medical Data Integration Security System for Accuracy Assessment of Cancer Screening: Development Study of Novel Data Integration System https://preprints.jmir.org/preprint/38922

発信機関 :  神奈川県立がんセンター