共同研究・競争的資金等の研究課題

2004年 - 2008年

シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業  

資金種別
競争的資金

世界で最も重要な木材害虫であるシロアリの生活は、その高度に発達した社会性によって成立している。社会性昆虫であるシロアリを最も効率的に駆除する方法は、その社会性を利用することである。本研究は、シロアリの根本的かつ普遍的な社会行動である卵保護行動を利用した世界初の画期的駆除技術の実現を目的とする。本技術の特性は、きわめて効果的にコロニーの中枢を破壊できる点にある。擬似卵を卵として認識したワーカーは、速やかに生殖中枢へと運搬し、保護行動をとることが分かっている。擬似卵に殺虫活性物質を含ませてシロアリ自らに生殖中枢へと運搬させるため、駆除にかかる労力を大幅に削減できる。さらに、駆除に必要な薬剤の量が微量で済む点も重要である。本技術の実現にとって、シロアリの卵認識物質の同定が最重要課題である。シロアリの卵保護行動に関する研究は松浦(研究代表者)らが取り組み始めたばかりであり、物理的、化学的認識メカニズムが実証されているものの、卵認識物質は未だ同定されていない。よって、本研究はシロアリの卵認識物質の同定および卵運搬行動の分析を目標とする。また、卵擬態菌核菌の化学擬態メカニズムを解明し、菌核菌を用いた卵認識物質の生産技術を確立する。なお、本研究により卵認識物質の同定が達成された後は、製品化に向けて企業との技術協力を予定している。
卵保護行動はシロアリの種に関わらず普遍的であり、本駆除技術は日本だけでなく、世界中のシロアリに適用できる。卵運搬を利用した駆除法は、殺虫剤の大量散布や毒餌による既存の駆除法よりも格段に効率的にコロニーを駆除でき、安全かつ経済的であるため、世界のシロアリ駆除技術を刷新すると考えられる。本技術により、専門の駆除業者に依頼することなく、家庭レベルでのシロアリ駆除も可能となる。