講演・口頭発表等

2013年

タイリクモモンガの巣移動に対する捕食者の影響

日本霊長類学会大会プログラム抄録集
  • 澤田石 理紗
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  • 鈴木 圭
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  • 佐川 真由
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  • 嶌本 樹
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  • 古川 竜司
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  • 柳川 久

記述言語
日本語
会議種別

 哺乳類のいくつかの種は複数の巣を持ち,しばしば他の巣へ移動する.巣移動の理由の 1つとして,巣内の外部寄生虫の増加が原因といわれているが,捕食者に巣の位置が見つかることも巣移動の理由として考えられる.そこで,本研究では複数の巣を持つことが知られているタイリクモモンガ Pteromys volans について,巣移動に対する捕食者の影響を調べた.捕食者の存在によって本種が巣を移動するか検証するために 32個のねぐらで以下の 4実験を行い,本種の巣移動の頻度を調べた.1)本種の営巣樹洞木から約 1mの距離に,捕食者であるフクロウの剥製を置いた ( N=19).2)本種が巣から顔を出した時にフクロウの剥製を飛ばし樹洞木に衝突させた ( N=7).3)本種が巣から顔を出した時にフクロウの声を聞かせた ( N=18).4)対照区として剥製を置かず,剥製を飛ばさず,声も聞かせなかった ( N=22)それぞれの引っ越し頻度は,1)フクロウの剥製を設置した場合は10.5% (2/19)2)剥製を衝突させた場合.は71.4% (5/7)3)声を聞かせた場合は22.2% (4/18),4)対照区は18.2% (4/22),となった.このことから,フクロウの剥,製を営巣木に衝突させるとタイリクモモンガが巣を移動する割合が高くなるといえる.つまり捕食者が巣に気づき,襲ってきたときに本種は巣を移動するのだろう.したがって複数の巣を持つことは,捕食者を回避する手段の1つになるだろう.

リンク情報
URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005471614