2019年4月 - 2023年3月
ステファヌ・マラルメと19世紀末フランスの読書有害論
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
2020年度は、前年度の理論的側面の研究成果を踏まえて、マラルメの個々の作品の分析と、19世紀末の社会情勢の調査をおこなった。
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上半期は、晩期の散文詩『賽の一振り』の重層的な構造についての読解を掘り下げたが、新型コロナの影響で、その成果の一端は、マラルメ研究史の研究成果とともに、『渦動する象徴』(2021年2月刊行)に所収の「田辺元における芸術作品の認知的価値――『マラルメ覚書』と象徴のインフォグラフィックス」に活用した。
下半期は、「挨拶」などの短い韻文詩の読解をおこなったので、先行研究の資料を収集しながら、発表準備を進めている。そして、ポール・ブールジェを含めた当時の社会現象である「読書有害論」に、前年度の理論的側面の研究成果を接続すべく、「ボヴァリズム」の研究にも着手しており、こちらも現地からの資料を取り寄せ中である。
また、以上の成果を発表すべく、2021年10月28~30日に開催されるシカゴ大学での「フィクション・フィクショナリティ研究国際学会」のために準備したproposalが採用されたので、当該日程での成果発表が決定した。
さらに、今年度の研究を通じて、マラルメの非個人的で中性的な作品の持つ倫理性と、現代のカナダやフランスの中立的・中性的な言語コミュニケーションやそれに立脚した文学作品が有する倫理性とが、マラルメやブランショに影響を受けたケベックの女性詩人ニコル・ブロサールらのフェミニズムに接近しつつ生み出す作品群と、フランスのモニカ・ウィティッグやアンヌ・ガレタの前衛的な創作活動とによって、ゆるやかに連続していることが見えてきたため、インクルーシブな書法(l'ecriture inclusive)をめぐる今日のフランス語圏の議論を詳細に辿った。
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上半期は、晩期の散文詩『賽の一振り』の重層的な構造についての読解を掘り下げたが、新型コロナの影響で、その成果の一端は、マラルメ研究史の研究成果とともに、『渦動する象徴』(2021年2月刊行)に所収の「田辺元における芸術作品の認知的価値――『マラルメ覚書』と象徴のインフォグラフィックス」に活用した。
下半期は、「挨拶」などの短い韻文詩の読解をおこなったので、先行研究の資料を収集しながら、発表準備を進めている。そして、ポール・ブールジェを含めた当時の社会現象である「読書有害論」に、前年度の理論的側面の研究成果を接続すべく、「ボヴァリズム」の研究にも着手しており、こちらも現地からの資料を取り寄せ中である。
また、以上の成果を発表すべく、2021年10月28~30日に開催されるシカゴ大学での「フィクション・フィクショナリティ研究国際学会」のために準備したproposalが採用されたので、当該日程での成果発表が決定した。
さらに、今年度の研究を通じて、マラルメの非個人的で中性的な作品の持つ倫理性と、現代のカナダやフランスの中立的・中性的な言語コミュニケーションやそれに立脚した文学作品が有する倫理性とが、マラルメやブランショに影響を受けたケベックの女性詩人ニコル・ブロサールらのフェミニズムに接近しつつ生み出す作品群と、フランスのモニカ・ウィティッグやアンヌ・ガレタの前衛的な創作活動とによって、ゆるやかに連続していることが見えてきたため、インクルーシブな書法(l'ecriture inclusive)をめぐる今日のフランス語圏の議論を詳細に辿った。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K13141
- 体系的課題番号 : JP19K13141
この研究課題の成果一覧
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論文
2-
日吉紀要 フランス語フランス文学 (73) 45-63 2021年10月
-
『ETUDES FRANÇAISES』 (27) 201-223 2020年3月
MISC
1-
日吉紀要 フランス語フランス文学 (75) 83-115 2022年10月
講演・口頭発表等
1-
Société internationale d’études sur la fiction et la fictionnalité 2022年3月2日