共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2020年3月

流域資源管理に向けた水文・藻類モデルを利用した河川総生物量推定手法の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(A)  基盤研究(A)

課題番号
16H02363
配分額
(総額)
44,720,000円
(直接経費)
34,400,000円
(間接経費)
10,320,000円

環境DNAの分解速度を推定するために魚を用いた水槽実験を行った.水槽実験においては魚の放出した環境DNAと水槽内の乱流強度,飼育した個体数の相関を調べた. この結果,個体数密度の違いによるDNA初期濃度の違いや流速は分解速度に影響を及ぼさないことが理解された.また,河川水中の無脊椎動物のDNAを対象とし, 定量PCRによる無脊椎動物DNA濃度およびメタバーコーディングにより得られた目的生物群集のDNA含有割合を用いたところ,両推定値とも有意な正の相関をカゲロウ, カワゲラ, ハエ目が示した.環境DNAと水文改変指標について,観測データやシミュレーション等を駆使して有効性を検討した.
前年度から継続して志津川湾奥部で河口部食物網への河川影響評価のための調査を行った.連続観測の結果,植物プランクトンは3月頃低水温による制限から解放されて濃度が増すこと,さらに温暖期の強い栄養塩制限下では降雨による河川からの栄養塩流入にともなって植物プランクトン濃度がパルス的に上昇することが明らかになった.
阿武隈川水系東鴉川流域における炭素収支および炭素動態を調べた結果,衛星データで推定した純一次生産量の約1/3がリターフォール量となっている.リターフォール量の0.8%が溶存有機炭素量として東鴉川から流出していることが分かった.一方,炭素・窒素安定同位体比と脂肪酸を用いた食物網解析から河川上流域の食物連鎖を支えている有機物源は付着藻類であり,落葉などに由来するリターはほとんど利用されていないことが明らかとなった.しかし,秋田県の渋黒川ではリター由来の有機物が主要な炭素源として利用されていることが,炭素・窒素安定同位体比の結果から示された.渋黒川はpHが3程度の酸性河川であり,付着藻類の現存量が極めて少ない.そのような特殊な環境下ではリターの有機物源としての重要性が相対的に増していると考えられた.

ID情報
  • 課題番号 : 16H02363