共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年8月 - 2020年3月

植民地台湾のインフラ(港湾・河川事業)にみる「公共」のあり方と植民地的特質

日本学術振興会  科学研究費助成事業 研究活動スタート支援  研究活動スタート支援

課題番号
19K20832
体系的課題番号
JP19K20832
配分額
(総額)
2,340,000円
(直接経費)
1,800,000円
(間接経費)
540,000円

旧植民地地域のなかには、植民地時代に整備されたインフラ設備を脱植民地化後も使い続けていることがあるが、その歴史認識は錯綜状況にある。植民地のインフラ設備はその「公共」の内容にいくつもの留保がつけられた。これに対し、被支配民族側もインフラ設備を自分たちのものにすべく訴え、動いた形跡がある。本研究は申請者のこれまでの研究で用いていた「植民地的開発」という概念を発展させ、植民地のインフラ設備の整備において植民地的特質がどのように現れるのか、植民地台湾の港湾・河川整備の事例において明らかにする。
本研究の特色は、植民地はpublicとofficialが明確な違いをもつ空間であるという視点から「公共」財の植民地的特質を解明することにある。植民地下のofficialなものは被支配民族が使用不可能ではないものの使用に困難が伴うものである。一方のpublicは広く公衆に開かれてなければいけないが、植民地において公論public opinionを主張することは厳しく制限され被支配民族を単位とする公論形成は弾圧を受けた。よって、必ずしも対立的概念でないはずのpublicとofficialが植民地的状況下では対立概念として浮かび上がる。植民地権力と被支配民族はインフラ設備の運用をめぐり、互いに攻撃をしかけ、交渉、無視した。この植民地権力と被支配民族の摩擦をインフラ設備のpublic化(公共財の自治)とofficial化(支配の道具)のせめぎ合いとして整理することで植民地の「公共」なるものの特質を解明する。
本研究の意義は歴史研究に新たな知見をもたらすと共に、旧植民地と宗主国とも重なる現代の各国間の開発援助・技術移転のより良い関係構築に資するものである。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K20832
ID情報
  • 課題番号 : 19K20832
  • 体系的課題番号 : JP19K20832