講演・口頭発表等

2016年6月

クロルピリホスが培養ラット神経堤細胞の遊走に及ぼす影響に関する研究

第43回日本毒性学会学術年会
  • 宇佐見誠
  • ,
  • 満長克祥
  • ,
  • 奥田裕計
  • ,
  • 土井守

記述言語
日本語
会議種別

[目的] 化学物質が神経堤細胞の機能に及ぼす影響は、発生毒性発現機序の一つとして考えられている。演者らは、これまでラット神経堤細胞遊走実験法を確立し、化学物質が神経堤細胞に及ぼす影響を調べてきた。今回、発達神経毒性を有すると考えられるクロルピリホスを用いて実験を行い、その影響を調べた。 [方法] ラット10.5日胚から菱脳部の神経管を摘出して培養し、培養24時間目にクロルピリホス (0, 6.25, 12.5, 25, 50 および100 µM) を培養液に添加した。培養期間中に神経管から遊出する細胞の広がりとして神経堤細胞の遊走を調べた。 [結果と考察]クロルピリホスの細胞毒性によると考えられる形態変化を示す細胞が、25 µM以上で散見された。神経堤細胞の遊走に及ぼす影響として、培養48 時間までは50 µMまでは促進傾向が認められ、100 µMでは抑制傾向が認められた。培養48から72時間では、最低濃度の6.25 µM以上で抑制傾向が認められ、25 µM以上で有意差が認められた。神経堤細胞の遊走促進をより高感度に調べるために、培養18時間で神経管を除去すると、クロルピリホス (100 µM) は遊走を促進した。さらに、頭部および腹部神経管を培養し神経管の部位の違いによる差異を調べたところ、培養48時間では、クロルピリホスの影響は殆ど認められなかったが、培養72時間では、頭部神経堤細胞には遊走の抑制傾向が認められたが、腹部神経堤細胞には遊走の促進傾向が認められた。これらの結果から、クロルピリホスの神経堤細胞遊走に及ぼす影響は、暴露時間および神経管の部位により異なると考えられた。

リンク情報
URL
http://jglobal.jst.go.jp/public/201702222520309463