2020年4月 - 2023年3月
イネ科牧草におけるエンドファイトの垂直伝播を制御する遺伝子の同定
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
イタリアンライグラス- Epichloe occultance共生系(自然界での共生系)とイタリアンライグラス- E. uncinata共生系(人工接種による共生系)における、エンドファイトの種子から植物体への移行率を比較するために、3組み合わせのE. occultance感染個体とE. uncinata感染個体の単交配後代種子(室温で2年間保管したのち冷蔵保存)について、エンドファイトの感染率および幼苗移行率を評価した。平均種子感染率はE. occultanceが89.9%、E. uncinataが77.1%、平均幼苗移行率はそれぞれ、92.3%および35.8%であり、これまでの知見と同様に、E. uncinata共生系において幼苗移行率が低い傾向が認められた。さらに精緻な比較を行うため、宿主であるイタリアンライグラスの遺伝的背景を揃えることを目的に、各交配組合わせについて、E. occultanceおよびE. uncinata感染後代個体間(full-sib)で隔離交配を行い後代種子を得た。ただし試験遂行のために十分な量の種子が得られなかったため、再度隔離交配を実施した。後代種子感染率に影響する要因のうち、植物体から後代種子への菌移行過程を調べるため、E. occultance感染1系統とE. uncinata感染2品種の穂内の感染種子マップを作成した。菌は穂軸中を植物の根元から穂先方向へ、また小穂中を穂軸から先端方向へ伸長し、菌糸分布域内では高率に種子感染が成立していた。このことから種子感染率は菌がどれだけ植物体の先端まで伸長できるかによって決まることが明らかとなった。また菌糸分布域の大きさは菌種および宿主植物によって異なる可能性が示唆された。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K05989
- 体系的課題番号 : JP20K05989