MISC

2021年

ヒトiPS細胞樹立におけるゲノム変異とその機構

日本毒性学会学術年会
  • 荒木 良子
  • ,
  • 法喜 ゆう子
  • ,
  • 菅 智
  • ,
  • 砂山 美里
  • ,
  • 今留 香織
  • ,
  • 上村 悟氏
  • ,
  • 中村 美樹
  • ,
  • 藤田 真由美
  • ,
  • 安倍 真澄

48.1
開始ページ
S3-3
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14869/toxpt.48.1.0_s3-3
出版者・発行元
日本毒性学会

分化細胞から身体を構成するほぼすべての細胞に分化させることが可能な多能性幹細胞を創出できるようになり、胚由来のES細胞の使用に伴う倫理的問題が克服され一気に再生医療が現実的になったと考えられている。この細胞系譜転換はゲノム初期化とよばれ、エピゲノムの状態の再編成・変更のみによると考えられていた。実際のゲノム初期化法にはiPS法と核移植(nt)法があり、それぞれ作出された細胞はiPS細胞、ntES細胞と呼ばれES細胞と酷似していることが知られている。しかしながら、現在では、点突然変異だけでも、ゲノム全体では500-1000箇所(遺伝子コーディング領域に限れば3-5カ所)/細胞株も存在することが、エクソームおよび全ゲノムシーケンシングから明らかになっている。同様の異常はこれまで調べられた全ての細胞株で共通にみられている。

「エピゲノム再編成はゲノム変異を伴う。」という我々を含む数グループの主張は当初から大きな議論を巻き起こしてきた。その医学利用を推進しようとした場合、免疫原性、造腫瘍性の原因となり得るこの現象が短期的には不都合な事実であることは当然である。今回、当初から今まで続いている「変異は用いた親体細胞の一部の細胞に既に存在したものである(pre-existing)」という柱となっている反論も含め、de novo変異の有無、そして変異発生メカニズムについて我々のこれまでの研究を中心に紹介したい。

さらに、明らかになった分子基盤からの仮説を基に試行錯誤の結果、変異の低減化に初めて成功したので紹介する。これらゲノム初期化に伴う変異発生機構に関するいくつかの新しい発見は、エピゲノム再編成メカニズムの理解に繋がるとともに、iPS細胞、ntES細胞の安全性向上にも大きく寄与する。またその一方でそれらの限界も明らかにされることで再生医学利用をより現実的に促進する。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14869/toxpt.48.1.0_s3-3
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390851961199094528?lang=ja
ID情報
  • DOI : 10.14869/toxpt.48.1.0_s3-3
  • CiNii Articles ID : 130008073885
  • CiNii Research ID : 1390851961199094528

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