MISC

2016年7月

サルレトロウイルス5型(SRV-5)のニホンザルへの感染実験.

第32回日本霊長類学会大会
  • 岡本宗裕
  • ,
  • 吉川禄助
  • ,
  • 阪脇廣美
  • ,
  • 鈴木樹理
  • ,
  • 坂口翔一
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  • 兼子明久
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  • 中村紳一郎
  • ,
  • 三浦智行
  • ,
  • 宮沢孝幸

32
開始ページ
47
終了ページ
47
記述言語
日本語
掲載種別
研究発表ペーパー・要旨(全国大会,その他学術会議)
DOI
10.14907/primate.32.0_47_1
出版者・発行元
日本霊長類学会

<p>近年、京大下霊長研および生理学研究所のニホンザル繁殖施設(以下生理研繁殖施設)において、原因不明の血小板減少症が流行し、多数のニホンザルが死亡した。我々は、疫学調査とニホンザルへの感染実験を行い、霊長研で発生したニホンザル血小板減少症の病因が、サルレトロウイルス4型であることを明らかにした。一方、生理研繁殖施設で発生した同症は、疫学調査の結果からサルレトロウイスル5型(以下SRV-5)との関連が強く示唆されていたが、病因の確定には至っていなかった。そこで、SRV-5のニホンザルへの感染実験を行い、SRV-5と同症の関連を調べた。発症個体から分離したSRV-5をin vitro培養し、2頭のニホンザルの静脈内および腹腔内に投与した。また、分離ウイルスから作製した感染性クローンも同様に2頭のニホンザルに投与した。投与後、血中の血小板数、ウイルスの有無を経時的に調べると共に一般性状、出血等を観察した。その結果、SRV-5ウイルスRNAは投与後8日目から確認され、その後実験終了までウイルス血症が持続した。血小板数は15日目まではほぼ正常値を維持していたが、それ以降培養ウイルスおよび感染性クローンを投与した各1頭で急激に減少し、24日目には1万以下となったため安楽殺した。また1頭は、22日目から血小板数が漸減し47日目には2万5千まで低下したが、その後回復し50日目以降はほぼ正常値で推移した。残りの1頭は、実験期間を通して血小板数の減少は認められなかった。そこで71日目より、生存中の2頭に対し免疫抑制剤としてデキサート2mg/kgを毎日筋肉内投与した。しかし、感染後100日まで血小板数の減少やその他の臨床症状は認められなかった。以上より、ニホンザル血小板減少症はSRV-5の単独感染で引き起こされることが確認された。一方で、感染個体の半数は無症候性のキャリアとして生存し、免疫抑制をかけても発症しなかったことから、発症・非発症には複数の宿主要因が複雑に絡み合っていると考えられた。</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14907/primate.32.0_47_1
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005418807
ID情報
  • DOI : 10.14907/primate.32.0_47_1
  • CiNii Articles ID : 130005418807

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