共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2023年3月

オンライン筆跡の鑑定手法の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(C)

課題番号
19K04940
体系的課題番号
JP19K04940
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

法科学における筆者識別では,伝統的に筆跡の「画像」としての特徴から個人性を抽出してきた.この手法では,字画の長短や位置関係などの「画像」としての特徴だけでなく,字画線の濃淡や転折部の曲直などから抽出した同一筆跡内の相対的な筆圧や書字速度などの書字中の運動情報の個人性についても,筆跡の観察結果から得られた知識の蓄積に基づいて利用している.しかし,書字運動についての情報は,観察結果に基づいた感覚的な情報に基づくものが多く,体系化が困難である.一方,現代社会においては,伝統的なペンを使って紙に書くという筆記の機会が減少し,タブレットに指や専用ペンで筆記する機会が増加している.タブレット筆跡は,タブレット上のペン先位置を一定時間ごとに測定したペンの「軌跡」であるため,オフラインの「筆跡」とは厳密には形状が異なっている.一方,タブレット筆跡は,書字中の運動情報をオンラインで取得できるので,字画線の形状や濃淡・幅などと運動情報の関係を明確にできる.オンラインデータを利用した筆者識別手法を開発することにより,将来さらに機会が増加することが予想されるタブレット筆跡の筆者識別が可能になるとともに,筆跡と書字中の運動情報の関係が明確になる.そこで,本研究では,伝統的なオフラインデータによる筆者識別手法とオンラインデータ処理の融合を図り,オンライン筆跡の筆者識別手法の開発を目指した.令和3年度は,オンラインで取得したペン先位置データと書字速度データを使用して筆者識別実験を行った.筆者識別手法は,令和2年度に行った,筆圧変化とペンの軌跡を使用した筆者識別と同様であるが,筆圧変化にかわって書字速度データを使用した.書字速度の表示は,ペンの軌跡上に5段階に分けた書字速度を色分けすることによった.深層学習により10人の筆者の筆者識別を行った結果,正答率は約61%で,筆圧変化に比較して正答率が低かった.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04940
ID情報
  • 課題番号 : 19K04940
  • 体系的課題番号 : JP19K04940