共同研究・競争的資金等の研究課題

2006年 - 2008年

糖鎖を用いた、食中毒菌の生産する有害タンパク質の高感度検知法の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
06F06582
体系的課題番号
JP06F06582
配分額
(総額)
2,400,000円
(直接経費)
2,400,000円

昨年度までに、エンテロトキシンと結合可能で、ベンジル基、アセチル基などで適切に保護された、末端のシアル酸がグリコリル化した特徴的な3糖(Neu5Gcα2→3Galβ1→4Glcβ1→spacer-N_3)の完全保護体の合成を達成している。本年度は、まずはじめに、このグリコリル化シアル酸含有3糖の脱保護を試みた。すなわち、この完全保護体について、(1)NaOMe/MeOHによる脱アセチル化、(2)水酸化ナトリウムによるメチルエステルの加水分解、(3)水素雰囲気下水酸化パラジウムによる接触還元(脱ベンジル化とアジド基のアミノ基への還元)を経て完全脱保護を行い、フリーのNeu5Gcα2→3Galβ1→4Glcβ1→spacer-NH_2(化合物1とする)を約60%の収率で得た。この脱保護体には異性体のβ2→3体が混入していたので、シリカゲルカラムで精製して副生成物を除去し、目的の3糖を得ることができた。その後、DMF中トリエチルアミンの存在下、コハク酸イミドで活性化したリポ酸と1時間反応させ、還元末端側のスペーサーにアンカーとなるチオール基を導入した望みの3糖誘導体へ高収率(90%)で変換した。
比較のために、3糖のグリコリル基がN-アセチル基で置換されたNeu5Acα2→3Galβ1→4Glcβ1→spacer-NH_2も別途合成した。すなわち、適当なアルキルスペーサーを還元末端側に有し、2,2',3,6,6'位がベンジル基で保護された2糖Galβ1→4Glcβ1→spacer-N_3誘導体をはじめに合成した。次にこの2糖をアクセプターに用い、シアル酸メチルチオグリコシド体をドナーに用いてNIS/TfOHの存在下でグリコシル化を行い、65%の収率で完全保護されたシアル酸3糖誘導体に変換した。グリコリル体と同様にして脱保護を行い、望みの完全脱保護体、Neu5Acα2→3Galβ1→4Glcβ1→spacer-NH_2(化合物2とする)を75%の収率で得た。その後、還元末端側のアミノ基にリポ酸を91%の収率で導入した。これらの2種類の3糖誘導体は、self-assembled monolayer(SAM)法によって金基板表面に固定化して糖鎖被覆チップを作製した。標準タンパク質であるヘマグルチニンを用い、バイオセンサーに表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、当該蛋白質と合成した糖鎖との相互作用を解析したところ、化合物1のグリコリル体には弱く結合したが、化合物2には強く結合したことを明らかにした。シアル酸部位のアセチル基とグリコリル基の違いを明確に識別した結果を与えた。現在、論文投稿準備中である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06582
ID情報
  • 課題番号 : 06F06582
  • 体系的課題番号 : JP06F06582