講演・口頭発表等

2012年

幼児における「浮き趾」と足部、足趾の形態は関係するのか?

日本理学療法学術大会
  • 荒木 智子
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  • 須永 康代
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  • 鈴木 陽介
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  • 木戸 聡史
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  • 井上 和久
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  • 久保田 章仁
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  • 相澤 純也
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  • 加地 啓介
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  • 兵藤 甲子太郎
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  • 高柳 清美
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  • 増田 正
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  • 森田 定雄

記述言語
日本語
会議種別

【はじめに、目的】 足部の成長は幼児期が最も著しい。昨今、立位時に足趾が接地していない「浮き趾」という状態が散見される。「浮き趾」は痛みや不快感などはない。本研究の目的は幼児における浮き趾の出現と足部形態・足趾形態との関連について検討し、「浮き趾」の発生要因を探索することである。【方法】 対象は健常な3-6歳の幼児100名(男50名、女50名)、200足である。3歳児39名(78足)、4歳児18名(36足)、5歳児37名(74足)、6歳児6名(12足)であった。対象は足部に問題や既往がないもの、測定時に外傷などがないものとした。足長・足幅を測定し、フットプリントと写真を採取した。フットプリントは立位で測定をした。写真は座位で上方より撮影した。足趾の接地状態についてフットプリントの撮像状況により、各足趾に0-2点(0点:完全離地、1点:部分接地、2点:完全接地)で点数化した。また、写真より足部形態の特徴(ギリシャ型(以下G型)、エジプト型(以下E型)、スクエア型(以下S型))を分類し、写真と触診から評価した。足趾形態は足趾の変形がない(以下N群)、Claw toe群(以下C群)、Hammer toe(以下H群)、内反小趾群(以下A群)に分類された。評価は全て同一検者が実施した。統計学的処理はSPSS17.0を用い、各年齢群間での足部形態、足趾形態と浮き趾についてKruscal-Wallis検定を行い、浮き趾の点数と足部形態、足趾形態について多変量分散分析、多重比較を行った。いずれの方法でも危険率は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 幼児及び保護者に対して、研究内容・方法について書面で説明し、署名により同意を得た。測定時には改めて口頭で幼児に同意を得て、測定途中でも中断できるように配慮し実施した。【結果】 全体の77.5%は第5趾が完全離地の状態であった。第5趾の「浮き趾」が多いのは先行研究と一致した。3歳児の67%、4歳児の75%、5歳児の86%、6歳児の91%にみとめられ、5歳児は3歳児に比べて第5趾完全離地は有意に増加していた(p<0.01)。浮き趾の平均点数は全体で4.5点、3歳児は4.5点、4歳児は4.5点、5歳児は4.6点、6歳児は3.7点であった(N.S.)。足部形態の分類では母趾が最も長いE型が54%だった。次いでG型33%、S型13%であった(N.S.)。3歳児、6歳児ではE型が多く、4歳児、5歳児ではG型が多かった。足趾変形はN群が多く60%でC群が32%、H群は5%にみられた。足趾変形と浮き趾の点数はA群が最も低く3.1点、他の3群は4点台であった。N群とC群で3-5歳間は年齢とともに平均点が上方に変化した。C群がN群より平均点が高かった。足部形態と浮き趾の点数ではG型、E型がS型よりも高い点数を示した。また足部形態との比較では、全分類でN群が多かった。C群、H群はG型で最も多くみられ、次いでE型であった(N.S.)。【考察】 第5趾の「浮き趾」は全体の77%にみられ、年齢に伴う増加はなかったが、3-5歳では部分接地の割合が減少し、完全離地が増えていた。しかし全趾を含む点数では有意な変化はみられず、第5趾特有の変化であることが示唆された。足部形態では、先行研究でE型が70%以上とされているが、本研究ではそれより低い割合にとどまった。ここから幼児の足部形態の多様性が示唆される。足部の長軸方向への成長は骨の成長に依存するため、足部形態が変化していくことが推測される。足趾の変形は6割がなかったが、「浮き趾」の平均点は低かった。ここから足趾の変形と「浮き趾」の関連はないことが明らかになった。幼児の足部、足趾は成人に比して柔らかく、その間の形態変化は歩容や姿勢制御など機能面への影響が考えられる。足長は3-5歳で、足幅は4-5歳で著しく進む。運動発達もその間に著しく進み、姿勢制御の体性感覚は6歳頃から優位になる。姿勢制御には足部の関与が大きく、そのためにも足部形態、足趾機能を良好に保つことが重要だと考える。これまで「浮き趾」を足部形態の異常としてとらえてきたが、足部形態の多様性が多く明らかになり、今後は機能面との検討が重要である。【理学療法学研究としての意義】 足部・足趾は歩行時に重要な役割をもち、足部形態は痛みや機能障害を呈する病的変形を除いても多様である。形態の多様性を把握することで健康増進やパフォーマンスの向上などに寄与できる。幼児期の健やかな成長を促すためにこれらを把握し、検討することは理学療法学研究として意義がある。

リンク情報
URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004692578