2002年12月
地域性をふまえた里山ブナ林の保全に関する研究
東京大学農学部演習林報告
- 巻
- 号
- 108
- 開始ページ
- 77
- 終了ページ
- 165
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
日本のブナ林は、それぞれの地域ごとに特徴的な土地所有、土地利用の形態を持ち、様々な面積、立地、林分をとりまく環境に分布してきたが、人工林化やパルプチップ材としての伐採、林地開発などにより、戦後以降ブナ林の面積の減少や断片化が急速に進み、山頂や尾根などの高標高地域、集落から離れた急峻な地形に偏在するようになった。そして、大規模な伐採や林道開発、土地利用の転換などにより面積が減少したり、生態系に対する人為的インパクトの増加が懸念されるブナ林が、全国の半数以上に及ぶ。一方、ブナ林の保全は国レベルの法令に基づく保全対象地の部分的な指定と行為規制が中心であり、植生調査結果などが記載されるにとどまるブナ林も多く見られる。自然環境保全法などの法制度の基づく地域指定は、主にブナ自然林を対象に行われており、里山ブナ林を対象とする保全施策は限られる。林地開発や過疎化の進行、あるいは土地利用形態の変化などにより、里山ブナ林の急速な面積の減少、質的な変化が予想されているのである。今後は、林地開発や人工林化などによる面積の減少、過疎化による管理放棄などが急速に進む全国の里山ブナ林について、それぞれの地域性を文化と生態の双方の観点から解明し、具体的な保全計画へとつなげていくことが急務である。その際には、本研究で提示したように、それぞれの地域の里山ブナ林の地域性の担保、保全の仕組み、そして生態的な管理のあり方について検討を行うことが重要である。里山ランドスケープの中で空間的なつながり、そして長い時間スケールを考慮した人為撹乱をいかに継続し、環境資源として利用していくか、という視点から里山ブナ林の保全計画を策定する必要があるのである。
- リンク情報
- ID情報
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- ISSN : 0371-6007
- CiNii Articles ID : 120001092945
- CiNii Books ID : AN00162451