新潟県行政および歯科医師会が1989年より実施している「在宅寝たきり者歯科保健推進事業」プロジェクトと共同し、これを更に発展させ超高齢者社会に対応させるために、コンピュータネットワークを利用した在宅寝たきり者の医療情報のデータベース化と歯科治療に対するサポートシステムを開発研究した.
まず、本研究の基盤となるデータベースサーバおよびダイアルアップアクセス装置を設置し、在宅現場から大学へ能率的かつセキュリティーを考慮したアクセス環境の構築を行った.続いて、共同プロジェクト側の研究者である新潟県内の10名の歯科医師が在宅現場からノートパソコンによりネットワーク経由でデータベースを利用した.通信経路としてはDoPa携帯電話網を利用し、在宅現場からオンラインでデータベースを利用する方法がセキュリティー的にも優れた方法と考えたが、通信速度が低速のため実用的でないことが判明し、訪問後に診療所等からダイアルアップしてデータの同期をとるオフライン方式をとることとした.また、多数のデータベース項目の入力は時間がかかり現実的ではないことが判明したため、在宅現場で実際に役立つデータに絞って入力するように改良を加えた.大学側研究者も加えた在宅患者の治療に関するネットワーク上でのカンファレンスを行うなど、データベース改良や新しいアプリケーション開発なども含めて、データを蓄積し実用化を目指した研究を行った.在宅現場でパソコンを使うことの困難性や歯科に関する情報のみでは不十分であることも明らかとなり、マン・マシンインターフェイスの改良や医科や介護情報といった総合的な医療情報を共有する仕組みを構築する必要性が明らかとなった.
研究期間終了後は、本研究は新潟県歯科医師会のコンピュータネットワーク化プロジェクト(NDAN)の中の主要プロジェクトとして引き継がれ、上記の問題点の解決と実用化を目指している.