1996年10月
思春期に顎偏位が増悪した反対咬合の長期観察例
日本矯正歯科学会雑誌
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- 巻
- 55
- 号
- 3
- 開始ページ
- 234
- 終了ページ
- 245
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- 日本矯正歯科学会
近年, 思春期前においてすでにわずかながら顔面の非対称ないしは, 正中線の偏位を呈している症例を多く認めるようになったが, このような症例における偏位の様相の経年的変化に関する報告は少ない.今回は, 成長とともに偏位が著明になった反対咬合3症例を紹介し, 顎偏位度あるいは正中線の偏位など, その偏位様相の特徴について検討した.症例1 : 初診時年齢, 女子.顔面の正中に対して上顎, 下顎がわずかに右側に偏位し, 上下顎切歯の正中線のずれが5.5mmであった.では, 上顎骨および下顎骨の右側偏位が著しくなり, 顔面の非対称が著明になったが, 正中線のずれは5mmと, 初診の状態がほぼ維持されていた.症例2 : 初診時年齢, 女子.顔面の正中に対して下顎はわずかに左側に偏位しているが, 上顎に偏位はなく, 上下顎切歯の正中はほぼ一致していた.では, 下顎が著しく左側に偏位したことにより, 顔面正貌も非対称が顕著となった.正中線のずれは7mmと増悪した.症例3 : 初診時年齢, 女子.上顎は右側, 下顎は左側にわずかに偏位しており, 上下顎切歯の正中線のずれは3mmであった.では, 上顎は顔面の正中にほぼ一致していたが, 下顎が左側に大きく偏位し, 顔面正貌も著しく非対称となった.正中線のずれは4.5mmになった.以上のことから, 混合歯列期におけるわずかな偏位が, 思春期にさまざまな形で増悪する可能性が示され, このような症例では経年的な成長変化の詳細な検討が必要と考えられた.
- リンク情報
- ID情報
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- ISSN : 0021-454X
- CiNii Articles ID : 110004013090
- CiNii Books ID : AN00187725