論文

2016年12月

HIV感染者における歯科観血的処置の臨床的検討

新潟歯学会雑誌
  • 永井 孝宏
  • ,
  • 児玉 泰光
  • ,
  • 黒川 亮
  • ,
  • 西川 敦
  • ,
  • 山田 瑛子
  • ,
  • 田邊 嘉也
  • ,
  • 高木 律男

46
2
開始ページ
69
終了ページ
75
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
新潟歯学会

今回、1999年から2015年までの17年間に歯科観血的処置を行ったHIV感染者23名(89処置)を対象に、(1)患者に関する項目、(2)処置に関する項目、(3)周術期管理に関する項目、の3つについて検討した。(1)年度別処置患者数について、1999年から2007年の前半は年平均1.0例であったのに対し、後半は年平均6.4例と顕著に増加していた。男女比10.5:1で、年齢は18〜63歳(平均44.2歳)であった。処置時のCD4陽性リンパ球数について、200/μl以上は9割、血中HIV-RNA量は検出限界以下が6割であった。約9割弱でARTが実施されており、合併疾患にB型肝炎3名、血友病とC型肝炎の重複症例が2名、糖尿病が1名いた。(2)診断は、齲蝕53例、根尖性歯周炎16例、埋伏智歯9例、辺縁性歯周炎5例と続き、処置内容は、普通抜歯72回、埋伏智歯抜歯9回、歯根端切除術3回などであった。(3)周術期管理について、歯科観血的処置は、外来・局所麻酔下49回、入院・局所麻酔下9回、入院・全身麻酔下および入院・静脈内鎮静法下がそれぞれ1回であった。1割で術後合併症を認め、その内訳は、後出血3例、抜歯後感染2例、ドライソケット1例であった。免疫状態が良好でウイルス量が検出限界以下では、歯科観血的処置を特別視する必要はないものの、最近のHIV感染症の増加および慢性疾患化を考えると、個々の病態を十分に理解し、適当な環境のもと適切な態度での対応が歯科医療従事者に求められていると推察された。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0385-0153
  • 医中誌Web ID : 2017179271

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