2017年4月 - 2021年3月
明治の能楽復興における華族の役割――前田家周辺からの再検討――
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
西村は先年入手した絵葉書(大正6年12月、金沢・佐野舞台の臨時能楽)を金沢能楽会の番組と照合・分析して「金沢・佐野舞台の大正六年―新家元の来演を写す絵葉書から―」(『宝生』54号)を発表した。この年は宝生九郎が没し、家元を宝生重英が相続した年であり、東京の宝生流幹部や囃子方の重鎮がこぞって金沢に来演した近代能楽史の転換期に当たる。絵葉書の内の1枚は渡邊容之助「加賀宝生の舞台」に紹介されていたが、その1枚を含む20枚が出現したことにより、金沢能楽会にとって絵葉書を作製するほど記念すべき催しであったことや、写真に写る当時の能楽師たちの面影が鮮明になるなど、資料的価値の大きさを確認した。そのほか、宝生九郎伝を更新するための準備を前年度に引き続き行い、さらに作品研究として「〈鉄輪〉の女と鬼の間―現報に働く神慮をめぐる一考察」(『怪異を読む・書く』国書刊行会)、「アイの語りの分際(上)―前シテの語りと比較して―」(『金沢大学歴史言語文化学系論集言語・文学篇』11号)を発表した。
竹松は前年度に引き続き前田土佐守家に伝来する関係資料の翻刻を進め、前田直養の日記『覚書』の寛政5年・6年分を『財団法人金沢文化振興財団研究紀要』16号に発表した。寛政5年には金谷御殿での能の拝見や土佐守家での慰み能の記事が散見し、従来の加賀藩能楽史を補完する貴重な記事といえるが、同6年になると藩主前田治脩の命により緊縮財政の方針により能楽を含む様々な規式の簡略化が行われ、『覚書』にも能楽関連の記事がなくなる影響がうかがわれる。そのほか、熊本藩家老松井家の能楽資料の調査を実施した。
竹松は前年度に引き続き前田土佐守家に伝来する関係資料の翻刻を進め、前田直養の日記『覚書』の寛政5年・6年分を『財団法人金沢文化振興財団研究紀要』16号に発表した。寛政5年には金谷御殿での能の拝見や土佐守家での慰み能の記事が散見し、従来の加賀藩能楽史を補完する貴重な記事といえるが、同6年になると藩主前田治脩の命により緊縮財政の方針により能楽を含む様々な規式の簡略化が行われ、『覚書』にも能楽関連の記事がなくなる影響がうかがわれる。そのほか、熊本藩家老松井家の能楽資料の調査を実施した。
- ID情報
-
- 課題番号 : 17K02410
- 体系的課題番号 : JP17K02410
この研究課題の成果一覧
絞り込み
MISC
7-
金沢大学歴史言語文化学系論集言語・文学篇 (12) 1-14 2020年3月
-
金沢大学歴史言語文化学系論集言語・文学篇 (11) 33-48 2019年3月
-
怪異を読む・書く(国書刊行会) 9-20 2018年11月
-
宝生 (54) 26-28 2018年9月
-
古典演劇研究の対象と視点(金沢大学人間社会研究域附属国際文化資源研究センター) 61-80 2018年3月
-
金沢大学歴史言語文化学系論集言語・文学篇 (10) 1-16 2018年3月
-
石川教育展望 (69) 34-43 2017年11月