論文

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2017年

ダム貯水池群の利水運用に対する気候変動の影響に関する基礎的分析

水文・水資源学会研究発表会要旨集
  • 鈴木 俊亮
  • ,
  • 野原 大督
  • ,
  • 堀 智晴
  • ,
  • 佐藤 嘉展

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開始ページ
105
終了ページ
105
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11520/jshwr.30.0_105
出版者・発行元
水文・水資源学会

気候変動に伴って将来の水循環プロセスが変化することが懸念されており,長期的な渇水など,極端な現象に伴う水災害が発生しやすくなる可能性が指摘されている.こうした水災害にも対応し得る水資源管理システムを確立することは重要であり,とりわけ治水や利水等の機能を持つ多目的ダム貯水池が果たす役割は大きいと考えられる.本研究では,高解像度大気大循環モデルによる将来気候下における気象条件の予測結果を入力として,ダム利水操作モデルを組み込んだ流出計算を実施し,ダム貯水池群の操作の影響を加味した将来の河川流況を推定するとともに,将来の河川流況の変化がダム貯水池の利水操作に与える影響について基礎的な分析を行った.吉野川流域と最上川流域を対象に分析を行った結果,吉野川流域では夏季に流況の低下が,最上川流域では融雪時期のピークの早期化が見られる結果となった.ダム貯水池の利水操作のシミュレーション結果については,吉野川流域早明浦ダムでは,夏季の流況の低下に伴い,現行方式に沿って貯水池を運用する場合,夏季以降の貯水量が低下する傾向が見られた.一方,最上川流域白川ダムでは,冬春季の流況の変化により,春季の貯水量が多く維持されるものの,夏季には洪水期制限水位に貯水位を下げる影響で,冬春季の流況の変化が実質的にあまり影響しない結果となった.むしろ,夏季の流況の低下が制限水位を採用する期間での貯水量の回復を妨げ,より利水に影響を及ぼす可能性が示唆された.ただし,特に最上川流域では,積雪・融雪過程を十分に考慮できていないことなどにより,流況の再現性が低いことなどから,計算結果の妥当性向上のために更なる検討が必要であり,今後,地域気候モデルの出力値の利用や利水操作モデルの改善などと合わせて課題として取り組む必要がある.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11520/jshwr.30.0_105
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006236356
ID情報
  • DOI : 10.11520/jshwr.30.0_105
  • CiNii Articles ID : 130006236356

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