基本情報

所属
京都大学 (名誉教授)
学位
京都大学農学博士、京都大学農学修士、京都大学農学士(京都大学)

J-GLOBAL ID
200901037527418886
researchmap会員ID
1000028102

主要研究テーマ

1.     トランスポゾ様配列 (MITE)の可動の証明,転移機構の解明,生物の進化との関係究明,育種的利用法の開発:

 すべての生物のゲノム中に莫大な数で存在する小さなトランスポゾン様DNA配列(600 bp 以下でORFをもたない),すなわちMITE(miniature inverted-repeat transposable elements)が,ゲノム中を転移するトランスポゾンであることを,イネの細粒突然変異の易変性(細粒突然変異が野生型に復帰変異する現象)の原因を追究するなかで,動植物を通じて初めて明らかにすることができました(このMITEをmPingと命名しました).従来,化石遺伝子と考えられていたMITEが生物の進化に不可欠なDNA配列に変化をもたらす重要因子であることを証明したこの成果は,「Nature」誌に掲載されました(2003年1月).その後は,mPingの転移機構の解明研究に取り組み, 日本のイネ品種がmPingのコピー数(ゲノム中の数)50前後のものと800以上のものとに層別されることを見出し,mPing(すなわちMITE)の増幅(増殖のこと)を制御する因子がゲノム中に存在することを示す(iPS細胞の癌化を防ぐためにはヒト細胞でこの制御因子を見つける必要がある)とともに,mPingの挿入サイトが真正クロマチン領域に多いこと(PNAS 2006),遺伝子内ではイントロン領域がもっとも多く,次いで3’-非翻訳領域,5’-非翻訳領域と続き,もっとも少ないのがエクソン領域あること,さらに,あるストレス応答遺伝子のプロモーター領域にmPingが挿入されると,その遺伝子のみならず他のストレス応答遺伝子の発現が高まって,イネに耐冷性や耐塩性などのストレス耐性を付与すること,すなわちMITEの転移によるゲノム変化が生物の適応進化にかかわることを発見しました.生物の適応進化を世界で初めて証明したこの発見もNature誌に掲載されました(2009年10月).また,トランスポゾンの発見により女性で初めて単独でノーベル生理学・医学賞を受賞されたB. McClintock女史の「トランスポゾンはゲノムショックが起こったときに転移しやすくなり,これによって生物の進化が誘導される」とする「生物の進化に関わるゲノムショック仮説」の実証に成功する(Molecular Plant 2013)とともに,mPingがゲノム中で大量増殖できるのは,受精後直後の細胞数の少ない時期に転移酵素をコードする自律性因子(mPingの場合はPing)の発現が時期特異的に高まるためであることを明らかにしました(PloS Genetics 2014).さらに,mPing挿入多型にもとづく分子マーカーを作製するとともに,mPing転移を利用するイネのストレス応答改変技術を開発しました.【1.の主要論文】Molecular and General Genetics   (1999),  Genome (2001),  Nature (2003),  PNAS (2006),  Nature (2009), Molecular Plant (2013),    PLOS Genetics (2014) ,  DNA Research (2009), Molecular Breeeding (2013), など】

2.  イネ,コムギ,ダイズの重要形質を支配する遺伝子の探索・同定と機能解析

2-1  イネの出穂開花期の生理・遺伝学的解析:北海道から九州・沖縄,さらに台湾で栽培されている100以上の日本型(japonica)イネ品種の出穂開花期に関する遺伝子型を調査し、イネ品種の栽培地域と出穂開花期に関する遺伝子型との関係を解析して各地域の品種の成立を可能にした遺伝子型を明らかにするとともに,多数の出穂開花期突然変異体を誘発、育成し,その中からSe13Se14, Ef7など出穂開花期に関与する新規遺伝子を多数発見しました.これら新規遺伝子のなかには,熱帯や高緯度地方の稲作を安定化させる可能性があるものが含まれています.また,既知の遺伝子と新規遺伝子における遺伝子座間交互作用を解析し,イネの出穂開花に関わる遺伝経路を明らかにしました.イネ品種の栽培地域と出穂開花期に関する遺伝子型との関係を少し説明させて頂きますと、東北地方以南の品種のほぼすべてが,E1座およびSe9座にそれぞれ優性アレルのE1およびSe9を有すること,しかし,北海道品種は,すべてがE1座に劣性アレルのe1,大半がSe9座に劣性アレルのse9を有することを見出しました。50年にわたる研究の成果です.北海道の全域で稲作が可能になった理由として、「寒さに強い品種を育成した」とよく言われますが、そうではありません。正解は、イネにとって長日条件である北海道の日長【夏の日長:16~16.5時間(東北地方以南の品種は花芽分化不能です)】でも花芽分化できる品種を開発、栽培したからなのです。劣性アレルe1の利用が北海道全域での稲作を可能にしたことを明らかにすることができました。【2-1.の主要論文:Rice Genetics I (1986), Scientific Reports (2015), Annals of Botany(2001),  Theoretical and Applied Genetics (2009a, 2009b, 2011), Crop Science (2002), Plant and Cell Physiology (2012), Plants(2019), Genes & Development (2002), Euphitica(1996, 1997,2002), 育雑(1991,1992a, 1992b,1992c), Breeding Science(1997,1998a, 1998b, 2007), Plant Breeding (1998),  PlLOS One (2014), など】

2-2 イネの半矮性および長稈遺伝子の探索・同定:  第二次世界大戦後,アジア地域に訪れた食料危機は,イネとコムギにおいて大量の化学肥料を施しても倒伏しない半矮性(短・強稈)・多収品種の育成によって回避されました.しかし,その後の研究からイネにおいてはsd1,コムギにおいてはRht1およびRht2遺伝子以外に農業上有用な半矮性遺伝子が存在しないことが明らかにされ、これを危惧した国際原子力機関(IAEA)と国際連合農業食糧機関(FAO)は,「人為突然変異を利用した穀物における新規有用半矮性遺伝子の探索」をテーマとした国際共同研究を立ち上げました(1980年~1985年).当時,私が所属していた京都大学育種学研究室は,人為突然変異の効果的誘発法の開発と人為突然変異体の特性解析に関する研究を行っていたため,この共同研究に誘われ,私が担当することになりました.この共同研究を契機にして,その後もイネの半矮性に関する研究を続け,日本品種から有用半矮性遺伝子sd9sd10、コシヒカリの半矮性突然変異系統から有用半矮性突然変異遺伝子d60を発見することができました【2-2の主要論文:育雑(1990),  Breeding Science (1994),Hereditas (2000), Biology (2019) , IAEA TECDOC (1982,1984,1988) など】

2-3  イネ直立穂遺伝子EPの同定と形質発現作用の解明: 中国東北3省では,超多収の日本型(japonica)水稲品種(固定型)が栽培されています.それら超多収品種は直立型の穂を有しており,実っても穂が垂れません.この直立穂型品種を最初に開発した瀋陽農業大学水稲研究所(徐正進教授グループ)と共同で,直立穂の原因遺伝子を同定し,その形質発現作用を明らかにしました.直立穂品種は茎が太く強いことから窒素肥料を多く施用しても倒伏せず,その分多収になる,このため,中国の商業栽培では,基肥として日本の4~5倍量の窒素が施与されていました(現在は食味を良くするために3倍程度に減少).【主要論文:Theoretical and Applied Genetics (2009)) など】

2-4  イネいもち病抵抗性遺伝子の探索と同定:イネいもち病の抵抗性の検定法(罹病程度の基準病斑)を確立するとともに,イネいもち病真性抵抗性遺伝子を6(Pi8Pi13Pi14Pi15Pi16Pik-g)同定しました. 【2-4の主要論文: Phytopathology (1996), Plant Pathology (1998, 1999), Plant Breeding (1998) など】

2-5  イネにおける抗菌タンパク質キチナーゼ(chitinase)の機能解析:キチナーゼおよびユビキチン様タンパク質をコードする遺伝子を単離するとともに,それらの抗菌活性など生理・生化学的機能を明らかにしました.  【2-5の主要論文:Genome(2006), Enzyme and Microbial Technology (2008)など】

2-6  ダイズの種子貯蔵成分含有量の遺伝に関する研究:  【2-6の主要論文:Plant Breeding (2001),  Journal of Agricultural and Food Chemistry(2005), Breeding Science (2010. 2014), Transgenic Research (2010)など】

2-7 ダイズの発芽時冠水抵抗性遺伝子の探索と同定:日本のダイズ栽培では,梅雨の走りから梅雨の初期にかけて播種することから、発芽時に冠水障害を被ることが多く、発芽時冠水抵抗性遺伝子の探索とその利用が希求されています.本研究では,冠水抵抗性強品種Pekingと同弱品種タマホマレ間の組換え自殖系統96系統を用いて,冠水抵抗性に関するQTL解析を行い,互いに独立な4つの冠水抵抗性遺伝子(有効因子はPeking由来)を検出しました.また,これら遺伝子の生理学的効果を明らかにしました. 【2-7の主要論文:Plant Science (2009)など】

3. ユリの種間交雑および葯培養に成功: 柱頭切断および子房輪切り培養により,従来不可能であったユリの種間雑種(longiflorum × concolor)の作出に成功するとともに,葯培養による半数体の作出法および花糸を用いた大量増殖法などを開発しました. 【3. の主要論文:Plant Breeding (1996, 1998, 2005), Breeding Science (1998), Plant Science (1997),  Plant Cell Reports (1997) など】

4.人為突然変異 の効果的誘発法の開発と人為突然変異系統の特性解析:大学院生のころから20年間取り組んだ課題です.放射線および化学変異原による人為突然変異の効果的誘発法の開発に取り組み(毎年40,000個体を栽植・調査した),そのなかで約1,000種類の固定型突然変異系統(そのうち出穂期突然変異系統が500)を獲得しました.これら系統の選抜と純系化(固定化),さらに維持には多大の歳月と時間,さらに労力を要しましたが,恩師の山縣先生のお言葉通り,育成したこれらの系統はその後の私の研究室の研究を飛躍的に発展させる材料となったのです.私の研究の原点とも言えるものです. 【4. の主要論文:Radiation Botany (1973), Genetics (2005), 育雑 (1977, 1984, 1989), Gamma Field Symposia (1996, 2014) など】

5. 土壌微生物叢活性剤‘Takeo-Tanisaka液’(TT液)の開発と低資源投入型農業農業・水産養殖業上の利用および湖沼の水質改善に関する研究: 人類の持続的発展を保証する低投入持続型農業を実現するために,土壌微生物叢を多様化・活性化する力,すなわち多種多様な有機質や化学肥料の分解を促して土壌を肥沃にする力をもつTT液を開発し,その効果を野菜栽培および水稲栽培(日本各地、フィリッピンミンダナオ島)において検証しました.その結果,TT液の利用によって野菜や水稲栽培いずれにおいても化学肥料,有機肥料,および農薬を大幅に削減できることを明らかにしました.また,TT液は湖沼の水質改善きわめて有効であること,この効果を利用すれば,現在汚濁で放棄されているエビ養殖池の再生,および養殖池の汚濁を防ぐことができることを明らかにしました.  【5. の主要論文:J. Crop Res. (2022a, 2022b, 2023, 2025, など】

 

谷坂隆俊の恩師

山縣弘忠先生(京都大学)

 


主要な委員歴

  62

主要な論文

  313

主要なMISC

  348

書籍等出版物

  27

主要な講演・口頭発表等

  126

Works(作品等)

  30

共同研究・競争的資金等の研究課題

  48

社会貢献活動

  8

主要なメディア報道

  47