2016年
サクラ属における S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性認識機構の特異性
The Horticulture Journal
- ,
- 巻
- 85
- 号
- 4
- 開始ページ
- 289
- 終了ページ
- 305
- 記述言語
- 英語
- 掲載種別
- 書評論文,書評,文献紹介等
- DOI
- 10.2503/hortj.MI-IR06
- 出版者・発行元
- 一般社団法人 園芸学会
<p>核果類やアーモンドなど多くの果樹類が属するバラ科サクラ属植物は S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性を示す.このタイプの自家不和合性は,ナス科やオオバコ科,そしてバラ科リンゴ亜連にもみられる.S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性の認識反応における雌ずい側の反応特異性は S-RNase 遺伝子によって,また花粉側の反応特異性は F-box タンパク質遺伝子によって決定されている.バラ科サクラ属の花粉 S 遺伝子は S haplotype-specific F-box protein gene(SFB)とよばれ,S 遺伝子座に単独で存在する.一方,ナス科とバラ科リンゴ亜連では,複数の F-box 遺伝子が S 遺伝子座に花粉 S 遺伝子として存在し,それぞれ S-locus F-box(SLF)ならびに S-locus F-box brothers(SFBB)とよばれている.サクラ属植物やバラ科リンゴ亜連植物,そしてナス科植物やオオバコ科植物の S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性には,共通してユビキチンプロテアソーム系によるタンパク質分解系が関与していると考えられている.しかしながら,近年,花粉 S 遺伝子の機能損失変異体やヘテロ二倍体花粉を用いた研究から,サクラ属における不和合性認識機構の特異性が明確になってきた.サクラ属の SFB は自己認識に機能し,S-RNase の細胞毒性の発揮に関与する一方で,バラ科リンゴ亜連植物,ナス科植物,そしてオオバコ科植物の花粉 F-box タンパク質は非自己認識において機能し,S-RNase の解毒に関与することが明らかになってきたのである.本総説では,サクラ属植物の自家不和合性認識反応の特異性について,最近の知見を引用して解説する.</p>
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.2503/hortj.MI-IR06
- ISSN : 2189-0102
- eISSN : 2189-0110
- CiNii Articles ID : 130005433244
- identifiers.cinii_nr_id : 9000283621881
- Web of Science ID : WOS:000385903000001