2003年4月 - 2005年3月
前庭代償における小脳CRF登上神経系の機能解析:小脳失調モデル動物を用いた研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
- 課題番号
- 15591817
- 体系的課題番号
- JP15591817
- 担当区分
- 研究代表者
- 配分額
-
- (総額)
- 3,000,000円
- (直接経費)
- 3,000,000円
- (間接経費)
- 0円
- 資金種別
- 競争的資金
小脳失調モデルマウスの小脳における登上線維と苔状線維に対して、corticotoropin-releasing factor(CRF)に対する抗体を用いた免疫組織化学法を行った。その結果、Rolling mouse Nagoyaの小脳における登上線維と苔状線維のCRF免疫活性がコントロールマウスと比較して高いことを明らかにした。次に、カルレチニンに対する抗体を用いた免疫組織化学法を行うと、前庭小脳、すなわち小脳IX葉・X葉、片葉においてunipolar brush cellが特異的に染色された。しかし、unipolar brush cellの数は小脳失調モデルマウスとコントロールマウスとの間には差を認めなかった。一方、小脳IX葉・X葉、片葉においても苔状線維のCRF免疫活性がコントロールマウスと比較して高かった。そこで、小脳失調モデルマウスではunipolar brush cellにコンタクトするCRF陽性苔状線維の数が増加している可能性を検討する目的で、共焦点レーザー顕微鏡を用いた二重染色法を行った。その結果、小脳失調モデルマウスでは前庭小脳のunipolar brush cellにコンタクトするCRF陽性苔状線維の数が、コントロールマウスと比較して有意に増加していることが明らかになった。
この変化が、Rolling mouse Nagoyaの平衡失調に対する代償機構である可能性を検討する目的で、正常マウスに内耳破壊を行って平衡失調を引き起こし、前庭小脳のunipolar brush cellにコンタクトするCRF陽性苔状線維の数を検討した。マウスの内耳破壊は北原の方法を用い、平衡失調の程度は眼振の頻度で定量化した。マウスの内耳を破壊すると麻痺性眼振が観察され、時間経過とともに徐々に消失した。しかし、この経過中に小脳片葉のCRF免疫活性には変化を認めなかった。小脳片葉のunipolar brush cellにコンタクトするCRF苔状線維は変化していないと考えられた。
小脳失調モデルマウスでは登上線維のCRF活性が高いが、正常マウスの内耳破壊により、小脳の登上線維のCRF活性にも変化を認めなかった。
以上の結果から、前庭代償には小脳のCRF陽性登上線維ならびに苔状線維が関与している可能性は低いと考えられた。
一方、正常マウスの内耳破壊により、破壊側の内側前庭神経核のCRF陽性神経終末が減少することを見出した。CRFは小脳失調モデルマウスとは異なる機序により、前庭神経核において前庭代償に関与している可能性が示唆された。
この変化が、Rolling mouse Nagoyaの平衡失調に対する代償機構である可能性を検討する目的で、正常マウスに内耳破壊を行って平衡失調を引き起こし、前庭小脳のunipolar brush cellにコンタクトするCRF陽性苔状線維の数を検討した。マウスの内耳破壊は北原の方法を用い、平衡失調の程度は眼振の頻度で定量化した。マウスの内耳を破壊すると麻痺性眼振が観察され、時間経過とともに徐々に消失した。しかし、この経過中に小脳片葉のCRF免疫活性には変化を認めなかった。小脳片葉のunipolar brush cellにコンタクトするCRF苔状線維は変化していないと考えられた。
小脳失調モデルマウスでは登上線維のCRF活性が高いが、正常マウスの内耳破壊により、小脳の登上線維のCRF活性にも変化を認めなかった。
以上の結果から、前庭代償には小脳のCRF陽性登上線維ならびに苔状線維が関与している可能性は低いと考えられた。
一方、正常マウスの内耳破壊により、破壊側の内側前庭神経核のCRF陽性神経終末が減少することを見出した。CRFは小脳失調モデルマウスとは異なる機序により、前庭神経核において前庭代償に関与している可能性が示唆された。
- リンク情報
- ID情報
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- 課題番号 : 15591817
- 体系的課題番号 : JP15591817