2019年6月
腎移植、明日への挑戦 ロボット自家腎移植
西日本泌尿器科
- 巻
- 81
- 号
- 3
- 開始ページ
- 314
- 終了ページ
- 320
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 西日本泌尿器科学会
自家腎移植は本来摘出される腎臓を救済できる優れた手術だが、侵襲が大きく臨床応用の頻度は極めて少ない。2014年以降、傷の小さい低侵襲のロボット自家腎移植が北米を中心に臨床応用されている。当科ではまずブタでfeasibility studyを行いヒトへの臨床応用に移行した。対象は30代女性。左卵巣嚢腫破裂で緊急帝王切開および左付属器切除(出血量4L)。再出血のため左内腸骨動脈の血管塞栓術を施行。術後左尿管口より5cm頭側で長さ2.7cmの尿管狭窄に対し左尿管ステント留置。尿路造影にて左腎盂尿管移行部狭窄も疑われた。4年後、手術目的に当科を紹介されるも躊躇。さらに4年後、再診。創の小さいロボット自家腎移植を選択。傷も小さくステントフリーとなり患者は満足されている。ロボット自家腎移植は我々の症例も含め世界で4例報告されており、すべて距離の長い尿管狭窄に対して行われている。そうした症例に頻用されるileal ureterは腸管の尿の再吸収による代謝性アシドーシスなどが問題となり、Cr>2mg/dlでは禁忌である。Cr>2mg/dlの日本人は56万人も存在し、成人の179人に1人に相当することよりileal ureterを造設したときCr 2mg/dl以下でも、その患者が一生涯Cr 2mg/dl以下で過ごせる可能性は高くない。Boari flapは逆流防止がないもしくは困難で膀胱尿管逆流による尿路感染症などが問題となる。自家腎移植は尿の再吸収による代謝性アシドーシスがなく、逆流防止も可能な優れた手術である。ロボット自家腎移植は腎保存の新しい低侵襲手術である。(著者抄録)
- ID情報
-
- ISSN : 0029-0726
- 医中誌Web ID : 2019279595