2014年
SNSを活用した農山村地域コミュニティの再構築の可能性−総務省SCOPEプロジェクトの活動と成果を中心として−
農村計画学会誌
- ,
- 巻
- 33
- 号
- 1
- 開始ページ
- 46
- 終了ページ
- 49
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.2750/arp.33.45
- 出版者・発行元
- 農村計画学会
グローバリズムの進展やTPPによる農作物の関税撤廃の動きなど,農山村地域を取り巻く環境は激変の過程にある。農山村地域は,その歴史的過程において「結」や「講」等からつながる独自のコミュニティ機能を有しており,それが地域の様々な課題に対して解決力を発揮してきた。ところが,戦後数十年にわたって続く過疎化・高齢化,さらに混住化やライフスタイルの多様化等により,住民相互の対話の機会が失われ,地域コミュニティの機能は大きく脆弱化しており,地域の生産・生活・自然環境等を自律的に維持・管理することが困難となりつつある。このような状況下で,農山村地域コミュニティが担ってきた機能の「再生」が必要とされているが,集落そのものの弱体化を考慮すると,単一の集落における機能再生のみを軸とした解決策は困難な場合が多い。隣接集落を含む旧村・小学校区や,都市をも含み自然生態系のつながりを有する流域圏等,より広域のエリアを視野に入れて,様々な主体間の協働関係に基づいた新たなコミュニティ機能を「創造」していくことが求められる。本稿では,「再生」と「創造」を統合する意味で,「再構築」という言葉を用いる。地域内外の多様な主体が当事者意識を持って農山村地域の課題に取り組んでいくためにまず必要なのが相互理解・相互交流の促進であるが,農山村地域において障害となるのが時間的・空間的な距離である。それらの距離を克服する手段として注目されるのが,ICT(Information and Communication Technology)である。幸いなことに我が国では,2000年以降e-Japan戦略等を通じてICTのインフラ整備が急ピッチで進められ,現在では農山村地域においても有線・無線による高速なインターネット接続が可能となっている。ICTは,特に条件不利地域の日常生活において,買い物や医療,学習・就業機会の提供,交流促進といった様々な面から役割が期待される。既に携帯電話やスマートフォン,地上デジタルTVなど様々な形で日常に溶け込んでおり,意識するかしないかに関わらず,人々のライフスタイルに大きな変化をもたらしている。本稿では,農山村地域における地域内外の多様な主体間の連携や協働を促進し,新たなコミュニティ機能の再構築に結び付ける視点からみたICTの可能性について,筆者らが中心となって取り組んだ研究プロジェクトの成果に基づいて論じたい。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.2750/arp.33.45
- ISSN : 0912-9731
- CiNii Articles ID : 130005086418
- CiNii Books ID : AN00386889